草花(23)

 関東地方は、連日真夏日が続いています。

 梅雨入りは、例年より遅れそう。いつ頃になるのでしょうか。

 黒須田川周辺の遊歩道も、瑞々しい緑色の世界になっています。

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 この緑が覆う水辺には、小さな白い花々が、30℃近い暑さにも負けず、輝いています。

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 川面に浮かぶように咲いているのは「梅花藻バイカモ」の花です。

 水に映る花は、幻想的な雰囲気です。

 『神奈川県レッドデータブック』によると「バイカモ」は「絶滅危惧ⅠA類」に指定されています。

 黒須田川で「バイカモ」が咲いている場所は、限定されているようです。

バイカモ」は、清流に咲く花です。最近、水の汚れが少し気になります。

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 咲ば水咲ば水也草の花

      一茶『文化五六句記』

     *

 カワセミの傍には「ドクダミの花」が・・

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 そのドクダミの花と並んで群生しいる3弁の白い花。

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トキワツユクサ(常盤露草)」と言います。別名「野博多唐草」とも呼ばれます。

 名の由来は、葉がツユクサに似て、いつも青い葉からそう呼ばれたのでしょう。

「露草」と言えば、色鮮やかな青紫色の花が浮かびます。 その露草の仲間だそうです。

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 この 透き通るような純白の花びら・・美しいです。

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 この草花は、昭和初期に南アメリカから観賞用として持ち込まれた帰化植物です。

 とても可愛らしい清楚な花ですが、繁殖力が強く、今は野生化しています。

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 花は、黄色い6本の雄蕊と、その中心に1本の雌蕊で出来ています。その雌蕊は雄蕊より短くなっています。撮影時には、雌蕊は確認できませんでした。

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 「トキワツユクサ」は、外来生物法により「要注意外来生物」に指定されています。

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 花らしき物か白いぞ小草原

         一茶『八番日記』

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 白磁面取一輪挿

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      *

29,200日

 今日は、私の誕生日です。

 80歳となりました。

「29,200日」とは、80歳まで生きてきた日数です。

 男性の平均寿命は、81.41歳です。まだその年齢まで達していませんが、健康寿命は超えました。

 先日、「北海道・北東北の縄文遺跡群」が、世界文化遺産に登録される見通しとなりました。私も世界文化遺産への登録を支援していましたので、大変に嬉しいです。

 その縄文人の平均寿命は、31歳だと言われています。また江戸時代でも30歳代から40歳前半です。

 食料、医療技術など生活環境が違うので比較することはできませんが、「80歳」というのは、当時の人から見れば信じられないでしょう。

  *

 昨年、私は心臓の手術をしました。年齢相応の体の変化が来ているようです。

 老化が進む中で、歯だけは自分の歯で頑張っています。一番丈夫なのは「歯」かも知れません。

 俳句に「歯固め」という新年の季語があります。

『俳句歳時記』角川学芸出版によると室町時代の『世諺問答』に「人は歯をもって命とするゆゑ、歯の字をよはひと訓むなり。」とあるように、「歯固め」は延命長寿を願う儀式であると記されています。

  一茶は、歯周病?によるのか、若くして歯が抜けました。

 かなり気にしていたようで、歯固めについて数句詠んでいます。

 歯固の歯一枚もなかりけり

            『八番日記』 

 またこんな句もあります。

  歯が抜けてあなた頼むもあもあみだ

  この「あもあみだ」は「阿弥陀仏」のことですが、歯が抜けているために「あもあみだ」としか言えません。それをそのまま句にする一茶。

 歯がなくなった淋しさが伝わってきます。

   *

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 「歯」という文字を使った「羊歯(歯朶)」という最古の陸上植物があります。歯朶はウラジロとも言われ、「齢(し)足る」と長寿に意味づけをして、正月のしめ飾りに使われています。

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 2020年9月時点で100歳以上の高齢者は、8万人を超えたそうです。

 今年の3月、107歳で亡くなられた美術家の篠田桃紅さんの本『103歳になってわかったこと』幻冬舎を読んで、

 人は何かに頼って生きたい生き物です。103歳になって、この世で頼れるものは・・全面的に頼れるものはないと書かれています。そして

「・・人は自然の産物です。自然のなかの生き物の一種です」

「自然の一部として生まれてきただけ、と思えば気負いがなくなる。」

 そう思えば気楽なものです。と103歳の心境が書かれています。

 このような心境になれるのはいつのことだろうか。 

 次の言葉が、強く印象に残りました。

「歳をとるということは、創造して生きてゆくこと」

  *

 今日、娘と孫から、私の好きなカワセミの本。そして誕生日メッセージと花束で祝ってくれました。

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 カワセミの寿命は・・2年ほど。7年という記述もあります。

     *

     *

本箱(16)

 この4~5年、草木や生き物などを描いた小説や随筆などを読むことが多くなりました。それに合わせて自然環境問題に触れた本も増えました。

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 5月27日は、アメリカの海洋生物学者レイチェル・カーソンが生れた日です。

 カーソンは、わずか四冊しか著書を残していません。その代表する本が、よく知られている『沈黙の春青樹簗一訳・新潮文庫です。

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 この本は、1962年、環境の汚染と破壊の実態について、世に先駆けて警鐘を鳴らした本です。戦後、殺虫剤として使われた「DDT」の薬害について知っている方も多いのではないでしょうか。

 地球温暖化の問題を取り上げ、話題となったアル・ゴア著の『不都合な真実枝廣淳子訳・実業之日本社文庫の中で、ゴアは、幼少の頃、母がこの『沈黙の春』を読んでくれたと書いています。『沈黙の春』は、自然環境を考えるための問題提起をした20世紀のベストセラーでもあります。

   *

 残念ながらカーソンは、56歳の若さで亡くなっています。

 亡くなった後、生前の彼女の夢を実現する為に、友達によって出版されたのが『センス・オブ・ワンダー上遠恵子訳・新潮社刊です。

 レイチェル・カーソンが残してくれた最後のメッセージが書かれています。

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 「センス・オブ・ワンダー」とは、神秘さや不思議さに目を見張る感性」のこと。

 カーソンは、自然、そして生命の美しさを見たり、聞いたり、触れたりなどして感じることの喜び。この喜びによって、子供たちの豊かな感性が育まれることを願っていました。この本では、甥のロジャーと一緒に、海辺や森を探索した経験を愛情あふれる言葉で綴られています。

 「この感性は、やがて大人になるとやってくる倦怠と幻滅、わたしたちが自然という力の源泉から遠ざかること、つまらない人工的なものに夢中になることなどに対する、かわらぬ解毒剤になるのです。」(23ページより)

 カーソンは、この感性を子供たちに授けて欲しいと願っていました。そのためにも、ぜひ大人の人たちにも読んで欲しい本だと思います。

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 先日、カーソンの未公表原稿が載った『失われた森』古草秀子訳・集英社古書店で見つけました。日本で翻訳発行されたのは2000年です。

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 内容は、科学者であり、文筆家であった彼女が残した原稿と書簡を、ほぼ年代順に並べられ四部の構成となっています。そして内容は、じつに多彩で一人の偉大な科学者の精神史でもあります。カーソンの全体像を知る貴重な本の一つではないかと思います。

 その中のごく一部を紹介すると、第一部「若きカーソン」~野生生物保護への関心~1944年に書かれた「自然界の空のエース」では、神秘に満ちた「エントツアマツバメ」の驚くべき習性を詳しく観察して書かれています。

 カーソンの野生動物に対する豊かな観察力と科学的な知識の深さ、そして文章の巧みさは、若きナチュラリストの姿を身近に感じさせてくれます。

 この「エントツアマツバメ」は、日本で見られるツバメとは種類が違います。

 「エントツアマツバメ」について、私は図鑑でしか見ていませんが、アメリカ合衆国、カナダなどに分布していて、煙突を棲家にしているそうです。翅は煤のように灰褐色しています。

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 日本では、梅雨が近づくと「ツバメ」が巣作りを始めます。

 今年も、以前に紹介した田園都市線あざみ野駅の構内に帰って来ました。

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 この巣作りを、5月10日から観察していますが、2回ほど壊れました。

 一回目は、壁に上手くくっ付かず、ツバメ自身の重さで落ちてしまいました。

 二回目は、カラスに襲われて落とされました。

 襲われたツバメの痛々しい激しい鳴き声に偶然出会いました。

 その後、天敵に恐れずに、また巣作りを始めています。

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     *

 鳥の巣や突おとされし朶に又

         一茶『文化句帖』

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里桜の実

 黒須田川の遊歩道の桜並木。

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 華やかで美しかった「ソメイヨシノ」。今は、瑞々しい青葉に変わっています。

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 若葉を眺めていると・・

 年よらぬ心になりしわか葉哉

         一茶『文化句帖』

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 桜の樹液が好きなカメムシキマダラカメムシも現れました。

 念入て虫が丸しわか葉哉

        一茶『七番日記』

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 若葉の中のカワセミ

 餌を狙う鋭い眼差しではない、愛くるしい仕草と表情が好きです。

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 昨年まで気が付かなかったですが、ソメイヨシノに赤い実がついていました。

 実の数は少ないのですが、30本ある中で約1/3の木に実がなっていました。

 ソメイヨシノは、実を付けないと聞いていましたので・・

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 実の大きさは約1cmほどで、毒性はなく食べられますが、酸っぱく、苦く、渋い味がするそうです。

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 一般に、食べる「さくらんぼ」とは、品種が違います。

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 実が付いたのは、近くの公園に山桜の老木が数本ありました。それによって受粉したのかもしれません。

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 日本の桜を分類すると数えきれないほど複雑に分類されるそうです。一般的に大きく分類すると、山野に自生する野生の「山桜」と品種改良された「里桜」に分けられます。「里桜」は人間が交配した品種の総称をいいます。

 「ソメイヨシノ」は、江戸時代に、職人によって山桜の「オオシマザクラ」と「エドヒガンザクラ」を交配して作られました。里桜の代表ということになります。f:id:kanamankun:20210525141603j:plain

 里桜(ソメイヨシノ)は、山桜より寿命が短く、60~80年、長くても100年と言われています。また山桜ほど強くなく、病気にも侵されやすい品種です。手入れを怠ると次第に樹勢が衰えて来ますので、手入れや管理が大切だそうです。

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 この遊歩道のソメイヨシノは、樹皮のヒビ割れも気になります。まだコブのような症状は出ていないようです。枝の一部に出来た小さなコブは数年かけて大きくなり、コブから先の枝が枯死し、樹木全体に広がり樹勢が衰退していくそうです。

 「ソメイヨシノ」という桜は、人間によく似た樹木なのですね。

     *

     *

愛鳥週間2021

 5月10日から16日までは「愛鳥週間」です。1950年(昭和25年)この週間が定められてから70年以上になります。

 私たちの身近に生息している野鳥たちは、どんな環境の中にいるのだろう。

 今回は、黒須田川(上流付近)に飛来する野鳥たちの様子を眺めてみました。

 ほとんどの野鳥は、川の中や周辺の木々に止まったりしています。人が近づくと逃げていきます。しかしのんびりと餌を漁っているのはカルガモマガモです。その他の野鳥たちにとって一番の天敵は人のようです。

 こんな場所に・・逃げる?

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 逃鳥やどちへ向けても人の声

        一茶『文政句帖』

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 老鳥の追れぬ先に覚期哉

      一茶『文政句帖』

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 逃鳥や子をふり返りふり返り

      一茶『自筆本』

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 追れ鳥事すむ迄はかくれ居よ

        一茶『文政句帖』

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 追鳥を鳥笑ふや堂の屋根

      一茶『文政句帖』

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 親子鳥別れ別れに追われけり

        一茶『文政句帖』

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 黒須田川は、住宅地の中を流れている準用河川です。この川は豪雨などで起きる水害を防ぐために必要な河川です。しかし野鳥たちにとっては、このコンクリートに囲まれた川は、生息するには居心地のいい川ではないかもしれません。

 でも野鳥たちにとっては、この川や周辺の樹木から食べ物を得ており、生きるには必要な場所でもあります。

 黒須田川に飛来する野鳥たちは、どんな餌(魚、虫など)を食べているのだろうか。

ハクセキレイ

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シジュウカラ

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 脚で掴んでいる獲物は・・

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<カラス>

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 これは・・?

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キセキレイ

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コサギ

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チュウサギ

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 水鶏なく拍子に急ぐ小雲哉

       一茶『七番日記』

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<ジョビタキ>

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<シオシギ>

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メジロ

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カワセミ

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 鳥によって食べる物(魚・ドジョウ・エビなど)には違いがありますが、獲物には恵まれた環境だろうと思います。時には信じられないものを食べて・・います。

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 雨が降った後の泥水でも・・

 カワセミは、大きな魚を獲っていました。

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   *

 「愛鳥週間」を機会に、都会の中で生息する野鳥と人と関係、そして環境について考えてみました。

 『身近な鳥の生活図鑑』(三上修著・ちくま新書を読むと・・

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 私たちの生活する周りに多くの野鳥が生息しているのは嬉しいですが、良い面と悪い面があります。特に、餌やりについては、人によって価値観の違いがあり、判断をするのは難しいようです。悪い面としては、鳥が不健康になる。鳥の生態を変える。餌を与えている以外の生物への影響。水質の汚染。人が受ける害(鳥の糞)などが挙げられています。

 その解決策も書かれていますが、 都会の中で生息する野鳥と人との軋轢は避けられないようです。

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 また 都市にいる鳥を見る楽しさについても触れられています。

「都市にいる鳥を見るときは、都市の歴史に思いを馳せてみることです」「都市によって生息している違っていて・・その都市の歴史を反映していることです」「都市の歴史が鳥の生息場所を作った・・そこに住む鳥たちに影響を与えます」「都市が拡大すれば、当然、自然環境は少なくなり消えていきます」

 いろいろな都市や場所を訪れる時は、その都市の歴史を調べて見ることによって、鳥たちの世界がより深まるように思います。

    *

 今年は異常気象で暖かい日が続きました。黒須田川の水の流れが弱く、滞って淀みが出来、いつもの年よりも藻の発生が多くなっているように思います。

 それ以外にも、ゴミ(ビニール、アルミ缶など)が流れを堰き止めたり、汚れが目立ちます。こんな張り紙も、随所に掲げられています。

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 こんな風景の中で「清流の宝石・カワセミ」を見たくはありません。

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 こんな環境の中で、鳥たちの体の仕組みの多様さと環境への適応力の凄さを感じます。

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 元気なカルガモの子(12匹)が生れました。

 こんな風景を見ると、散歩していても癒されます。

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 これまで先を争って餌を漁っていた子ガモたち。

 母親が繁みに上がり眠りだすと、その傍で体を寄せ合って眠り始めました。

 母親は「お休みの時間ですよ」と子供たちに語り掛けたのでしょう。

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 こちらは遊歩道のど真ん中で愛し合う二羽。

 クルックーポッポーという鳴き声が、愛の囁きにも聴こえそうです。

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     *

サナエトンボ

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 このトンボは、黒須田川の遊歩道で見つけました。

 名前は「サナエトンボ」ではないだろうか?サナエトンボの種類の中の「ヤマサナエ」だろうか。

  トンボといえば,、秋のイメージがありますが、春から飛ぶトンボも多くいます。

 「サナエ(早苗)」という名前は、春の田植えの時期に羽化することから付いたようです。

  早速、田圃が多く残されている横浜市北西部にある「寺家ふるさと村」に行ってきました。

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 「寺家ふるさと村」は、横浜市が昭和58~62年に、青葉区寺家町の良好な田圃景観を有する農業地帯を、地域農業の振興と自然環境を保全するために整備されました。

 幾筋もの細く伸びた田圃と池や森があり、昔ながらの自然が残っている里山です。

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 「ふるさと村」に行った時は、まだ本格的に田植えは始まっていませんでした。

 

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 水路から水が取り入れられ始め、田圃に流されていました。

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 トラクタで苗代作りが始まっている田圃もありました。

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 田土がかき混ぜられて、土の中で眠っていた虫が現れ、その虫をムクドリが漁っていました。

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 ムクドリも、この時期をよく知っているのです。

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 近くの池からカルガモ夫婦も・・

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 田圃で大切なのは、水が流れ出ないようにする畔づくり(防水)です

 私の知っている畔作りは、鍬で壁を作るようにして、田土を土手(畔)に塗り付けます。この作業は労力と時間がかかります。

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 今はトタクタに畔作り用の機具を取り付け、簡単に畔を作っていました。こんな便利な機具があるとは知りませんでした。

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 昔は、この畔に枝豆を植えていました。今はどうしているのかな。

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 このふるさと村にも、美しい棚田があります。

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 この日は、田植えの農業体験が行われていました。親子が鍬や鋤を持ち、泥だらけになって苗代田作りをしていました。

 我こねたのも苗代と成にけり

         一茶『七番日記』

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 この棚田の奥に苗床がありました。

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 むらのない苗代とてもなかりけり

       一茶『七番日記』

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 この周辺にサナエトンボが飛んでいないか?探したのですが、見つかりませんでした。見つけたのは「シオヤトンボ」・・

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 この粉を吹いたような青白い色をしたのはオスです。メスの体色とは色が違い、メスは黄色です。

 この「シオヤトンボ(メス)」は、黒須田川の遊歩道で見つけました。

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 魁てうき草浮けり苗代田

        一茶『西国紀行』

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 水が張られた田圃の中で止まっていたのは「シオカラトンボ」です。

 「シオヤトンボ」と間違いやすいですが、尾の先が黒いのが「シオカラトンボ」です。

 シオカラトンボのメスの体色も黄色です。ご存じの「ムギワラトンボ」と呼ばれています。

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 こんな睦み合っている光景も見られました。

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 田圃に水が入り苗が植え終わるのは、5月下旬頃になるのでしょう。

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 「寺家ふるさと村」の周辺は、住宅地に囲まれています。交通の便もよく、休日には多くの人たちが訪れています。

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 「神奈川県レッドリストのトンボ類」で、サナエトンボ科の一部のトンボは「絶滅危惧種」に指定されています。「ヤマサナエ」は「要注目種」に指定されています。

 この昔ながらの里山の自然を守り、田植えが終わる頃には「サナエトンボ」が、ゆうゆうと飛び交っていて欲しいと思います。

      *

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早渕川を歩く

 昨年、あざみ野駅構内に 2つのツバメの巣がありました。残念ですが一つが壊れてしまいました。その壊れた巣の場所にツバメが帰って来ました。

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 久しぶり顔もって来る燕哉

         一茶『七番日記』

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 先日、田園都市線 あざみ野駅の東側に流れている「早渕川」の遊歩道を歩きました。遊歩道というより生活道にもなっています。 

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 歩行よい程に風吹く日永哉

         一茶『文政句帖』

  歩き始めて、今日は 夏日の気温になりそう。

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 「中村大橋」からは、一級河川で川幅も広くなっています。

 流れも緩やか。水は澄んで綺麗です。

 「ハシボソガラス」は、美味しそうに水を飲んでいます。

 

 ばか長い日やと口明く烏哉

         一茶『七番日記』

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 葦の間で哀しい「マガモ」の鳴き声が聞こえてきます。

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 誰?・・雌を探しているようです。

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 雌のマガモは、石の上にいました。夫婦だったようです。姿が見えたのでしょう。突然、同時に下流の方向に飛び去りました。その後、このマガモ夫婦には出会いませんでした。

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 早渕川は、全域がコンクリート護岸になっており、川の傍まで降りられません。この東名高速道路の下では、水に触れることができます。

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 浅瀬をヒョコヒョコと歩いている黒い生き物を見つけました。

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 「カワウ」でした。潜る様子はよく見ますが、こんな姿で歩くのを見たのは初めてです。

 傍にいる「カルガモ」は、すぐ逃げるのですが、餌を漁るのに夢中です。

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 一方「コガモ」の夫婦は、お腹も膨れ昼寝のようです。

 流れ木に曲眠りする小鴨かな

          一茶『文政句帖』

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 「早渕川」は、青葉区美しが丘を源として、都筑区港北区を流れて鶴見川に合流しています。この川は、多摩丘陵の成立とともに雨の浸食と湧水による蛇行になり「早瀬」と「渕」がありました。そこから「はやぶちがわ」と付けられたと言われているそうです。そして川底には、随所に土丹層が見られます。

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 246号線を越えると、川幅は広くなり開放感があります。 

 鍛冶橋には堰があり、穏やかな流れで生き物たちの集まる場所となっています。

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 亀と鯉とカルガモと鳩。

 そこにカワウも・・

 歩道からは見えませんが、渕には小さな魚がいるのでしょう。

 川の上を縦横に飛び回る燕。そろそろ梅雨の知らせかな。

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 ここに生息する亀は、外来種が多いそうです。

 一茶は『七番日記』の中で、文化9年2月に下総方面を旅した時、亀について十数句詠んでいます。

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 亀にとどきさう也亀の首

      一茶『七番日記』

(注)俳句では「亀」は無季で「亀鳴く」となると春の季語になります。

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 鍛冶橋を過ぎると護岸に木々が目立ちます。そのせいか川幅も少し狭く見えます。

 新緑で覆われた川は、生き物たちにとっては、いい環境になっています。

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 川の色も深みのある緑色に。

 川面に映る木々が美しいです。

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 ところどころに土丹層が現れ、水の流れや色にも変化があります。

 平らな土丹層ですが、細かい起伏があり、そこに流れる水の動き、輝きは美しい。

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 水の流れる音は微かにします。周囲の騒音でかき消されそうです。

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 水の波紋の美しさ。

 川面に吹く薫風が波紋を変えてくれます。

 その水の動きには癒されます。

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 川幅が狭くなるところでは、複雑な水の動き。

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 この流れの中を昇る鯉が、また新しい波を作ってくれます。

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 居ました。

 見つけました。

 「カワセミ

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 川の傍に生えた木。水の流れと淀み。そして深さ。カワセミは、魚がいる場所をよく知っています。

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 飛び込む音が聞こえました。

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 カワセミは餌を獲ると、近くの木陰に隠れます。今日は天敵が現れないようです。

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 この後、カワセミを見つけることはできませんでした。

 下流に行くと、川の中に石が多くなります。水の流れも変わり、水音も大きく聞こえます。 一部で護岸の補修工事が進められています。その川の中でも亀と鯉は元気に泳いでいました。

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 春の日や水さえあれば暮残り

         一茶『文化句帖』

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 商業ビルの立ち並ぶ境田橋まで2時間ほど歩きました。早渕川のほんの一部の生き物としかあえませんでした。

 川(水)を求めていろいろな鳥や生き物がやってきます。都会の中を流れる川だけに、周りの環境との調和が求められますが、少しでも多く自然環境を残して欲しいと思います。

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 昨日 、5月4日は「みどりの日」です。

 その緑を支えている水、そこに集まる生き物たちのためにも、水の環境も大事にしていきたいものです。

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