陶房の風景

陶房の風景(16)

24年間焼き物作りをしていた陶房を引き払うことに決め、先日、窯を売却しました。 長年の相棒であった窯とのお別れです。 新緑の中に吊り上がった重さ400㎏の窯。 昼夜を共にしただけに少し寂しい気持ちです。 この日は、陶房の庭の山桜は見頃でした。澄ん…

陶房の風景(15)

2月5日、午後から降りだした雪は、私の住む地域で8cmほど積もりました。都心の高速道路は早めに閉鎖されました。そのため予定していた工房行を1週間先に延ばしました。 1週間後は、2月とは思えない暖かさになりました。工房に入る細い小径に、突然「コジ…

陶房の風景(14)

この季節に工房に行くと、道路から入口にかけて、ヒメジョオンに覆われて通路が塞がれてしまいます。今回は、前回来た時にしっかりと草取りをしたせいか、それほど多く生えていませんでした。 この蝶は、シロチョウの仲間のスジグロシロチョウだろうか。 季…

秋の虫たち

新型コロナの発生から工房に行く機会が少なくなりました。先日も1ケ月ぶりに工房に行きました。紅葉には少し時期が早かったようです。 私を待っていたのは、工房の入口の板壁にしがみ付いた「アオマツムシ(雌)」でした。 松虫や素湯もちんちんちろりんと …

陶房の風景(13)晩秋

街頭ではジングルベルの音楽が聞こえる季節になりました。 紅葉前線も南下し、観光地では賑わっています。 わが工房の庭のモミジも、先年、大きな枝を剪定しましたが、いつもの鮮やかな色で紅葉しました。 少し散るうちや紅葉も拾はるる 一茶『八番日記』 紅…

陶房の風景(12)

花の時は気づかざりしが老母草の實 ( 召波 ) (春泥発句集) オモトは古くから観葉植物として栽培されており、老母草(オモト)は、万年青の別称です。 江戸時代には老母草と書いたようです。それは老婆(葉)が子供(赤い実)を抱いているように見えたか…

陶房の風景(11)

今年は暖冬と言われています。 しかし、昨夜はマイナス5.1度まで冷え込み、庭には霜の花が咲きました。 叶へばぞ陽につぼめる霜の花 ( 鬼貫 ) (俳諧集『七車』) 高さ:23.6cm

陶房の風景(10)

このテストピースは基本釉(透明釉)を決めるために作ったものです。 市販されている釉薬は多くありますが、基本になるのは透明釉です。 私の基本釉は長石と土灰の割合を調合して1250℃で酸化焼成しました。 現在、使用している基本釉は、長石90%と土灰1…

陶房の風景(9)

この本は奥田誠一箸「陶器大学」(昭和24年3月刊・座右寶刊行會版 )です。 発行されて60年以上にもなり、痛みが激しいです。 本焼きで温度管理をしながら、窯の傍でよく読んだ本の1冊です。 内容は「茶碗の話」というように入門書風になっており、陶磁器…

陶房の風景(8)

高台を削る時に湿台(シッタ)を使います。多くの人は素焼きのシッタを使うようですが、私は水道の配管などに使われている塩ビ管(硬質塩化ビニル管継手)を使っています。太さ、長さなど種類も多く、小さな作品を制作する時には便利です。また面取りしたも…

陶房の風景(7)

今年も陶房の軒下に巣作りが始まりました。蜂たちのいない間に、こっそりいただきました。 六尺の人追ふ蜂の心かな ( 蘭更 ) (『半化坊発句集』) 口径:15.5・高さ:7.1・高台径:5.0cm・重さ:270g

陶房の風景(6)

庭には大きな紅葉の木が2本あります。 時には駅から歩いて、この紅葉が見えると、自然に歩幅が大きくなります。 是を仰ぎつ登り来し是の紅葉や (井泉水) (『自選句集 金砂子』目黒書店・昭和21年9月刊)

陶房の風景(5)

毎年、暖かくなると、音もなく陶房に訪れて形跡だけ残していなくなります。 はね釣瓶蛇の行衛や杜若 ( 丈草 ) (『丈草発句集』)

陶房の風景(4)

窯の中のゼーゲルコーン(高温測定用具)です。今、1000℃付近かな。 周囲は暖かくなり、この時期(冬場)は暖炉になってくれます。 火桶抱て艸の戸に入るあるじ哉 ( 几董 ) (『井華集』) 72回目の本焼きの溶倒ゼーゲルコーンです。 いつも本焼きには、上…

陶房の風景(3)

我の大事な相棒(窯:灯油窯)です。付き合って、もう15年にもなります。 本焼き・素焼き合わせて150回以上焼成。大きな故障もなく、また温度管理も楽な窯です。 重さは450kgあります。東日本大震災では50cmほど動きましたが、今も活躍してくれて…

陶房の風景(2)

我が窯場の紅葉は真っ盛り。屋根には団栗と欅の葉がいっぱい。 ひらひらと木の葉うごきて秋ぞ立つ ( 鬼貫 ) 盌に、ひと葉が散って「木の葉天目」が生まれたのでしょう。

陶房の風景(1)

太陽の下で何を語り合っているのだろう・・壷たちは・・・ 陶工手に手に雨かかり来る壷を抱く ( 内島北朗 ) ( 『陶房』昭和17年3月刊・桑名文星堂 )