陶房の風景(13)晩秋

 街頭ではジングルベルの音楽が聞こえる季節になりました。

 紅葉前線も南下し、観光地では賑わっています。

 わが工房の庭のモミジも、先年、大きな枝を剪定しましたが、いつもの鮮やかな色で紅葉しました。
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 少し散るうちや紅葉も拾はるる

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 紅葉葉や爺はへし折り子はひろふ

          一茶『我春集』

 庭は、いつしか赤い色が多くなり、少しは寒い雰囲気を和らげてくれそうです。

  垣根の八重のサザンカは鈴なりに咲き、朝露を受けて・・今が満開です。

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 植え替えた万両も、元気に赤い実をつけてくれました。

 万年青は根茎、葉は薬効があります。青い実は秋が深まると、ふくよかで真丸い赤い実に熟します。 そして鳥が食べるそうです。

  赤い実は鳥も目につくかきね哉

          一茶『文政句帖』

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 夏の夜、美しい白い花を咲かせていた「カラスウリ」も赤い実になりました。

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  南天のこの葉の色はなんて表現すれば・・

 日本の伝統色で赤色の表現する言葉は「紅赤」「真紅」「臙脂色」など沢山あります。

 一番近い色の表現として「深紅」ではないかと思います。

「深紅」とは「深みのある真っ赤な紅色」のことです。別名「真紅」とも表記されます。

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  ヤツデの果実は、緑から茶色、黒へと変化して、翌春にかけて熟していきます。

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 赤色に包まれた工房で、今年、最後の作品作りとなりました。

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 伊賀赤(粗目)と鉾田土(水簸せず原土のまま)を混ぜました。

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 鉾田土は、鉄分の少ない部分を使用しました。

 砂混じりで粘性に欠け、単味での使用は難しい。

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 「伊賀土3号」は粗目を使用。土味は好きですが砂化が強く、ロクロ成形では手の皮が擦り切れそうです。

 今回は、いつもより花入れが多くなりました。

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 どこからか「カメムシ」が現れました。

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 屋外では、鳥の囀りが賑やかです。

 しかしロクロの音に消されてしまうのが残念です。

 今年は梅の木に「雀」が多く集まってきたように思います。

 少しおしゃべりが大きく、喧しく感じます。天敵はいないからだろうか?

  散紅葉雀の罠にかかる哉

         一茶『七番日記』

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 入れ替わりに来たのが・・「シジュウカラ

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 続いて「ヒヨドリ」。警戒心が強く、すぐに飛んで行ってしまいます。

 朝鮮唐津の花入れは「ヒヨドリ」の休憩場所かな。

 何度も何度も水を飲んで鳴きます。

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 「アオジ」は遠慮がちに垣根の木陰に現れました。胸の黄色に特徴があります。

「黄雀」と呼ばれたりします。

 庭に訪れる鳥たちの動きを見ていると、時間の経つのが速く感じます。

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 「オオカマキリ」は、木槿の木の1.5mの所に巣を作り、冬眠に入っています。

「カマキリは、その年の積雪を予測して卵を産む位置を決める」という言い伝えありますが・・ この冬はどうかな。

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 南天の幹にも巣を作っていました。

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 「女郎蜘蛛」は、工房の守り神で、出入り口や通路を巣で塞いでしまいます。

 枯葉を獲物と間違ったのかな・・格闘しているようです。

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 暖かい日には、枯葉の下からノコノコと現れる「カメノコテントウ」。

  背中の模様が大変面白い。初めて見ました。

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 桜、欅の葉は散り終えました。

 後は天気の晴れる日を望み、作品の乾燥を待つばかりです。

 本格的な寒さはそこまで・・

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 またけふもおち葉の上の住居哉

          一茶『七番日記』

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