本箱(21)

 10月27日から「読書週間」が始まりました。今年の標語は「この1冊に、ありがとう」に決まったようです。

 今年は、恒例の「神田古本まつり」が3年ぶりに開催され、先日、行って来ました。相変わらず古書には人気があり、お目当ての本を探す人の熱気で溢れていました。

 消毒用のアルコールが随所に置かれているのも、これまでにない新しい風景です。

 パラパラと立読み流す虫の秋

 ディバック肩に食い込む本まつり

 仙花紙の綴じ目ほつつる菊日和

 ベストセラー半額札と日向ぼこ

 こんな本が本箱に増えました。

 特に「読書」という題名に惹かれた本が1冊ありました。古書ではなく2009年9月に出版された『読書介助犬リビア今西乃子著・浜田一男写真・講談社青い鳥文庫です。介助犬については、少しは知っていましたが、本の読み聞かせに「犬」が関わっていたことは知りませんでした。

 日本ではアニマルセラピーとして「動物介在療法」「動物介在活動」があります。この本は「動物介在活動」の一つです。内容は、ドックシェルターで安楽死寸前のオリビア(犬)とサンディ(看護師)との出会い、そしてサンディのユニークな「R・E・A・Dプログラム」によって、落ちこぼれの子供たちが、オリビアに本を読み聞かせることで読書に親しみ、好きになって行く姿を描いたノンフィクションです。「読み聞かせ」は、本に親しみ、読む楽しさを知る読書の原点のように思われます。

 日本では、2016年9月に東京都三鷹市三鷹図書館で、このプログラムを参考にして日本独自の読み聞かせと触れ合い活動による「わん!だふる読書体験」がスタートしています。全国では活動の数は少ないようですが、動物介助による読書運動が進められているようです。

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 昨今、電子書籍が増え、紙の本離れが言われています。車中ではスマホを利用する人が多く、紙の本を読んでいる人は少なくなりました。私のよく行く書店も閉店になりました。

 11月1日は「本の日」です。改めて「本の歴史」について、こんな本を読みました。

『わたしの名前は「本」』ジョン・アガード/ニール・バッカー画/金原瑞人訳・FIJMART社・2017年11月刊

 「本」を主人公にして粘土板から始まり、パピルス、羊用紙、活版印刷から電子書籍までの「本」の歴史を自伝風に書かれた本です。随所に著名人の言葉とイラストなどが入り丁寧に作られています。特に印象に残ったのは、冒頭の言葉です。

 「本の前に、息があった。」・・この「息」とは・・つまり「呼吸」とも言えます。文字がなかった時は、先人は知識を口(言葉)で伝えていました。前述の言葉の通じない犬へ読み聞かせをする「読書介助犬」の活動の成果も、相互の呼吸(息)が重要な役目をしているように思われます。

 翻訳者の金原瑞人さんのあとがきには古代エジプトの頃、巻物(scroll)だった本は、広げ(unroll)ながら読んだ。そして現在、パソコンやタブレットe-bookはscrollして読む。もしかしたら、本はぐるっと一周して同じ所にもどってきたのかもしれない。」と書かれています。

 今後もデジタル技術の進歩で電子書籍は、更に新しい展開をしていくでしょう。次の段階(2周目)は「紙の本」と「電子書籍」の2つをうまく使っていくことになるのでしょう。

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