コスモス

 空たかくコスモスゆれる花原を

 ほそほそと行き来る道がある

  (ラジオ深夜便・誕生日の花と短歌365日)より

 この短歌は歌人・鳥海昭子さんが詠まれたものです。

 鳥海昭子さん(1929-2005)は、児童養護施設に勤務した経験の随筆など書かれており、1992年東京都文化功労賞を受賞されています。2005年10月9日、残念ですがNHKラジオの「ラジオ深夜便」が放送されている期間中に亡くなられました。

 22年前に雑木林を伐採し、そこに工房を建て多くの山の土を入れました。その土はやせているので、この土でもよく育つだろうとコスモスの種を蒔きました。結果はひょろひょろとしながらも大きく育ち、庭が華やかになった記憶があります。

 コスモスの原産地はメキシコで、明治時代に渡来してきた花ですが、日本の風景にはよく似合った美しい花です。主に秋に咲き花弁の形が桜に似ていることから「秋桜(アキザクラ)」とも呼ばれています。しかし「オオハルシャギク(大春車菊)」という和名はあまり知られていないようです。

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 黒須田川の遊歩道に咲いているコスモスは、まとまっては生えていませんが、随所に咲いています。近くの花好きな人が種を蒔いてくれたのでしょう。

 鳥が運んだのだろうか。ブロック壁から・・

 風が運んだのだろうか・・周りの雑草に負けず咲く2輪。

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 黒須田川のコスモスの花の蜜を求めてやって来る蝶や虫たちです。

(10月上旬に撮影)

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 二十四節気の「霜降」も過ぎ、初雪、初氷や初霜の便りが聞かれるようになりました。コスモスは、晩秋の陽を浴び、実にしっかりとエネルギーを貯めて、次の季節まで眠りに入ります。

 たくさん飛んでいた蝶や蜻蛉は、いつの間にか姿が消えて、冬鳥の鳴き声が増えたように思います。川の傍の高木には、早くも縄張りを主張する鵙の高啼きが聞こえます。

 冷たい北風が吹き始めると、だんだんと華やかなコスモスの色が消えて、遊歩道も淋しくなります。

 淋しさに鵙がそら鳴したりけり

         一茶『発句鈔追加』

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