「三寒四温」という言葉は、2月から3月上旬にかけて、冬から春への季節の変わる時期に使われます。最近は、気温の寒暖差が大きいように感じられます。
この2~3日は、4月下旬の暖かい日が続き、桜の開花が早まりそうです。
動物行動学者・日高敏隆さんの『春の数えかた』(新潮文庫)という随筆があります。日本エッセイスト・クラブ賞を受賞した本で、身近な動植物や自然の謎などを、素人にも分かりやすい表現で解き明かしてくれています。シンプルな美しい線の挿絵(イラスト)は、造園家でもある大野八生さんです。
この本の最後の章「春の数えかた」の中に「有効積算温量」という言葉が出てきます。変温動物である虫たちは、三寒四温といわれる時期に、いちいち寒暖差を反応するのではなく、ある一定の温度以上になった日だけを積算しているという。この一定の温度を発育限度温度と言うそうです。この発育限度温度を超えた日を積算した総和が「有効積算温量」です。虫によって異なりますが、この温量によって卵が孵ったり、幼虫が蛹になったりします。虫たちは、この温量の総和で春になったと思うのでしょう。
そういえば桜の開花予想も「600度の法則」が知られています。桜も花を咲かせる日を計算しているのでしょう。
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その虫たちや草木が、春を待つ様子を探しに、早野・柿生の里を歩いてみました。
木々の芽ばえは、まだのようです。でも木々の間を木霊するように鶯の鳴き声が・・
うぐいすや少し勿体つけてから
一茶『文政句帖』
道端の「オオイヌノフグリ」の青い小さな花が、暖かい日差しを浴びて微笑んでいるようです。
いつも水を満たしている「林ケ池」は干されています。アオサギ、チュウサギ、コサギ、カイツブリなどの水鳥たちの姿は見られません。
おらが田に水がないとや鳴水鶏
一茶『七番日記』
湧水の細い流れの中に鳥らしきものを見つけました。茶褐色をしているので流木かなと思いました。
泥水の中にいたのは「タシギ」です。
長い直線の嘴を泥水に挿して餌を探していました。和名の「田鴫」は、田によくいることに由来するそうです。
この鳥は、春と秋に渡りの途中で飛来する旅鳥です。鳥獣保護法では狩猟してもよいそうで、食材としての肉は美味しいそうです。
しかしレッドリストによると、東京都は「準絶滅危惧種」。神奈川県は「注目種」に指定されています。
帰りに寄った「上池」で「カイツブリ」を見つけました。
1年前は「林ケ池」に棲息していました。池の水がなくなり、この場所に来たのかもしれない。
もう大きく生長しているようで潜りも達者です。
家族はいるのか探したのですが、見つかりませんでした。
日々気温も上昇、有効積算温量も増え、虫たちの活動も始まりそうです。
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