10月4日は「古書の日」です。
恒例の「神田古本まつり」も、コロナ禍のため今年も中止になりました。
昨今は「新古本」と呼ばれる言葉をよく聞きます。「古書」と「古本」とは、どう違うのでしょう。
「古書」は、絶版になってから年月が経ち新刊として手に入れることが出来ない本。「古本」は、一度誰かに購入されたことのある本。「新古本」は購入されなかった新刊の本。と分類されるようです。
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私の本箱から古い本(古書?古本?)を探してみました。
この『鳥』という本は、4~5年前の古書市で見つけた本です。
著者は、鳥類学者の内田清之助(1884-1975)と美術記者の金井紫雲(1887-1954)の共著です。1929年(昭和4年)三省堂から発行されました。
店頭で函もなく、むき出しになって積まれていました。穏やかな観音菩薩の顔をした鳳凰の画に魅かれて買いました。
調べてみると、この鳳凰の画は、1959年に紫綬褒章を受章された西澤笛畝(1889-1965)の作品でした。背表紙の「鳥」の筆文字は、今にも飛び立つように見えます。
開いた扉の画は、1962年に文化勲章を受章された日本画家の中村岳陵(1890-1969)でした。
本文には6枚の野鳥の写真(モノクロ)が挿入されています。その野鳥を撮影したのが、以前にもブログで紹介した、私をカワセミの世界に惹き込んだ野鳥生態写真家の下村兼二(1903-1967)です。(兼史とも書きますが兼二は本名です)
この本を買った時は、知りませんでしたが、著名な方々による豪華な本でもあります。
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本の特徴は「序文」に記されています。
「科學藝術の匂ひなければ、乾燥枯淡に陥り易く・・専門以外の人々にとっては・・また藝樹にも科學の根底なければ、内容の動揺を免れません。この故に、科學の藝術化、趣味化が叫ばれ、同時に藝術の科學的研究が要求せられます。」
構成は、61羽の鳥を春夏秋冬にわけて鳥類學を中心に文学的、芸術的な視点も併せて鳥たちを紹介しています。
例えば、秋の鳥である「ヒヨドリ」の見出しを紹介すると「鵯(ヒヨドリ)の詩趣」「その形態」「種類」「島鵯」「飼ひ鳥としての鵯」「藤原家隆と鵯』「名妓と鵯」「鵯の習性」「椿と鵯」「古歌の鵯」「鵯の句」「鵯の寓話」と、鳥の知識全般について書かれており百科全書のようです。鳥に興味のない人にとっても愉しめる本です。
この本は、発刊されてから半世紀以上経過しています。その後、鳥の生態、分布、分類など、新しく解明された部分もあるでしょう。それによって芸術的な表現も変わるかも知れません。しかし古書の魅力は、タイムカプセルのようなもので、時を超えた新しい発見が生れて来るようにも思います。
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赤い実がひよを上戸にしたりけり
一茶『文政句帖』
ここで紹介するのは、黒須田川に飛来するヒヨドリたちです。少し写真を加工してみました。
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