鳥の混群

 先日、今年初の積雪がありました。午前から降り出し夕方前に霰となり、最後は冷たい雨。芝生は雪化粧されましたが、予想された積雪量にはなりませんでした。

 黒須田川の鳥たちも降雪と共に動きも緩慢になり、囀る声も弱々しく悲しげに聞こえます。雪は周りの音をも搔き消してしまうようです。

 或時はことりともせぬ千鳥哉

         一茶『七番日記』

 しっかりと赤い実を確保したのは「ジョウビタキ」。

 翌日には雪も溶け、小鳥たちの囀りが賑やかに聞こえます。ほころび始めた早咲の桜の枝には、シジュウカラが来て仲間を呼んでいました。

 続いてエナガ・・メジロも集まって来ました。

 冬の時期は、木の葉がないので木々の隙間から、囀っている鳥たちの姿が良く見えます。ヒヨドリのようです。

 集まって来た小鳥たちは、日陰の枯草にいる虫?を獲るのに夢中です。

 動物が群れるのは、同種であることが多く、異なる種と一緒に行動するのはあまり見られませんが、シジュウカラメジロエナガなどの小鳥は、よく一緒に行動をします。このような種の違う小鳥が複数集まって群れることを「混群」と言います。そして「混群」には、2種類が3羽以上、互いに25m以内に最短5分はいて、同じ方向に30m以上移動するという定義があるそうです。

 鳥が混群する理由は、はっきりと解明されていませんが「身の安全(狙って来る敵を発見しやすくなる)」と「餌の確保(餌を見つけ易くなる)」のためではないかと言われています。これは鳥たちの生きるための知恵でもあります。

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 黒須田川では、この小鳥たち以外にも、四季を通じて多くの鳥が飛来します。そして採餌している鳥の所に集まって来ます。混群というよりか、餌を求めて異種の鳥が集まる「混集」です。動物園などでは、見ることが出来ない野鳥の行動が見られます。

 次の写真は、私が日常散歩する黒須田川で見られる、ごくありふれた風景です。時には餌を横取りしたり、追っ払ったり、他の種との力関係の優劣によって採餌は違ってきます。

 この異種の鳥が集まっている景色は、絵本の1ページを見ているようです。

 黒須田川には、10種類ほどの鳥が飛来しますが、ほとんどが単独行動をしています。このように異種の鳥が集まり採餌する鳥は限られています。鳥の世界にも優劣や力関係があるようで、お互いが一定の距離を保って採餌しています。この距離が崩れると争いになります。一方相性の良い鳥もおり、かなり近づいて仲良く採餌をしています。   

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 この写真は、私の工房の庭から見た風景です。

「雉」のつがいと「烏」がかなり近い距離にいます。雉と烏が争いをしている様子の写真を見たことがありますが、雉と烏は仲が良いのだろうか。

 これからどんな行動をするのだろうか・・少し気になります。

 「烏」が登場するこんな絵本を見つけました。『あきちゃった』アントワネット・ポーティス著・なかがわ ちひろ訳・あすなろ書房

 お話しは、雀が「チュン」と鳴くのを飽きてしまいます。しかし周りの小鳥たちは、雀は「チュン」と鳴くものだと諭しました。しかし違う鳴き声をしてみると楽しくなりました。雀は「アッパラポッケ」と鳴き、他の鳥たちも違う鳴き声をして楽しみますが、烏だけは今までの鳴き方にこだわります・・でも最後は鳥たちに諭されて「カッカンベー」と鳴きます・・なんともおかしい絵本です。

 動物は、自然の摂理によって鳴き声を変えられませんが、こんなユーモアを愉しむのも良いのではないでしょうか。

 前出の「雉」と「烏」は、鳴き声に特徴がありますが・・ひょっとして鳴き声を入れ替えようと話し合っていたのかな・・

 一茶の句に登場する烏は・・

 けろりくわんとして柳と烏かな

(注)一茶の俳句には類似句が多く、この句は文政版です。岩波文庫刊の『七番日記』では「烏」が「雁」になっています。

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