横浜中央図書館の正面のアプローチに、彫刻の鳩が6羽います。この図書館を訪れる度に、その生き生きとした躍動感ある姿に惹き込まれます。今にも飛び立ちそうです。
制作者は、1996年に文化功労章を受章された柳原義達(1910-2004)の作品です。題は「道標 鳩」です。この鳩は「孔雀鳩」でしょうか。「孔雀鳩」とは、カワラバトの改良種で翅が白く、開くと扇状になり孔雀のように見えます。
「カワラバト(ドバト)」は、日常身近に接している鳥です。平和の象徴でもあります。古くは伝書鳩として活躍してくれました。しかし不幸な運命を辿った鳩の仲間がいます。その鳩は「リョコウバト(旅行鳩)」です。図鑑などで調べると絶滅した鳥として記載されています。
「リョコウバト」は、北アメリカの東岸に棲息していた渡り鳥です。18世紀頃は北アメリカで約50億羽ほど棲息していたようです。その肉は美味であったので大量に捕獲されました。そして棲息地する森林が伐採され次第に減少し、19世紀終わりごろに絶滅してしまいました。
「リョコウバト」は全長22cm。雄雌同色です。この絵は『日本大百科全書24』(小学館刊)から引用しました。
この鳥は、巨大な群れをつくるのが特徴で、大群で移動すると数日間、空が覆われ、地上はうす暗くなったそうです。その捕獲と大群の移動の様子を、稲見一良著『ダック・コール』ハヤカワ文庫1994年2月刊の<第二話 パッセンジャー>の中で詳細に描かれています。
この本を読んで、ヒッチコックの映画「鳥」を思い出させるような恐怖と緊張感がありました。
*
いま「リョコウバト」は、図鑑でしか見ることが出来ないのは残念です。
先日、千葉県我孫子市にある「鳥の博物館」を訪れました。
鳥類の博物画で有名な鳥類研究家で画家のジョン・ジェームズ・オーデュボン(1785-1851)のギャラリーが開かれていました。
枝に仲睦ましい姿で描かれたリョコウバトの番が、実物とほぼ大きさの画で展示されていました。
館内には、絶滅した鳥として「リョコウバト」の写真もありました。
*
2020年4月に、新評論より『オーデュボンの鳥~『アメリカの鳥類』セレクション』という本が出版されています。美しい手彩色で描かれた精緻な版画の全435点の中の150点が掲載されています。絶滅した鳥たちも描かれています。また日本に渡ってくる鳥もいます。
この本には、知らない野鳥たちに逢える愉しみを与えてくれます。
*
私が住んでいる神奈川県でも絶滅したとされる鳩がいました。神奈川県レッドリストによると「カラスバト」です。かって横須賀市猿島に棲息していましたが、1974年以降棲息が確認されず、現在は絶滅したものと判断されています。原因は森林の伐採と考えられています。
環境破壊は、悠久の昔から生きてきた生き物たちを滅ぼしてしまうのです。少しでも鳥たちを絶滅させない努力が必要です。
*
黒須田川に飛来するカワラバト、時には白い鳥も・・
飛び立つと尾羽は灰色です。「アルビノ」かな?
こちらは幸せな「ラブラブ鳩」のカワラバトです。
鳩の恋烏の恋や春の雨
一茶『文政句帖』
*
*