本箱(13)

  今日、12月15日は、いわさきちひろさんの誕生日です。

 先日、東京の下石神井にある「ちひろ美術館・東京」を訪ねました。

 西武新宿線上井草駅から歩いて5~6分の閑静な住宅街の中にありました。

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 紅葉が残る大木に包まれるように赤い家がありました。

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 現在、「こどもの心を見つめて」展が開催されていました。

 いわさきちひろは、生涯、子供をテーマとして描き続けた画家です。館内には、ちひろの暖かい眼差しで描かれた幼児や子供たちの水彩画が展示されていました。

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 これはチケットです。

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 書店などで、よく見かけた少女の絵です。

 ベストセラーとなった黒柳徹子さんの『窓ぎわのトットちゃん』の表紙のカバーです。「こげ茶色の帽子の少女」という題がついています。
 ちひろの絵は、滲みやぼかしを生かした淡く柔らかな色調の水彩画です。特徴は、子どもたちの顔には輪郭線がなく、眉のない顔、あどけない印象的な黒い瞳。そして表情豊かな手の表現です。その手の形には、ひとりひとりの子どもの個性と動きをじっと見つめるちひろの暖かい眼差しがあります。また一本の線の中にも小さな命を吹き込もうとするちひろの愛情が感じられます。

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  一茶の句についての絵は、これまでに柳沢京子さんの切り絵『一茶のかるた』がありました。 この切り絵は、2019/9/23の『ISSA』の中でも紹介しました。

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 今回『ちひろと一茶』の本を購入し、一茶に関する本が、また増えました。

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 この本には、5つの章に分けられ、一茶の句が112句、ちひろの絵が50点掲載されています。一茶の句は、一茶が結婚し愛児の誕生からの句を中心に選ばれています。ちひろの絵は、表現豊かな子どもたちや生き物たち、そして四季の自然の風景が描かれています。私は「あの月をとってくれろと泣子哉」の月を眺める後ろ姿の子の手の表現が好きです。

 一茶は268句、蛙を詠んでいます。その中の4句が紹介されています。しかし蛙の絵は、どこにも出て来ません。「ゆうぜんとして山を見る蛙哉」では、新緑の山が3つ描かれているだけです。この山は、蛙が眺めている黒姫山飯綱山妙高山だろうと思います。他の3句では、蕗の若葉が描かれています。

 「ゆぜんとして・・」の句碑は、信濃町には3つ建てられています。その一つに八十二銀行の前に蛙の像があり、この句を今年の4月3日に亡くなられた作家で環境保護家でもあったC・W・ニコルさんが、英訳しています。

 この句の上に蛙が乗っかり、ゆうぜんと山を眺めています。(この写真は2018/10/03で紹介したものです)

 ちひろの絵の世界は、人と生き物たちと自然とが一体となって包み込まれているように思います。

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 信州は、ちひろにとって両親の故郷、そして黒姫山荘で絵本の制作するなど、深い繋がりがあります。この信州の旧野尻湖ホテルを舞台にしての「ちひろと一茶とのバーチャル対談(生きとし生けるものをみつめて)」は、200年の時空を超えた、違和感のない対話になっています。

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 一茶の句の中で、小さい命を優しい眼差で見つめて詠んだ句は、結婚して子供が生まる前後から多く詠まれています。

 文化15年5月14日に長女さとが誕生します。

 長男を亡くしているだけに、今度こそは健やかに元気に育って欲しいと願い、こんな句を詠んでいます。

 梶の葉の歌をしゃぶりて這ふ子哉『七番日記』

「梶の葉」は、諏訪大社の家紋でもあり、一茶の生家の近くには諏訪神社があり、梶の葉に願いを掛けたのでしょう 

(注)七夕に梶の葉(天の川を渡る船の楫に例えられた)に詩歌を書いて添えました。平安時代頃からの七夕の行事の一つでもありました。

 

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  梶の葉文白磁

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