本箱(12)

  11月12日は、ドイツの児童文学作家・ミヒャエル・エンデの生誕日です。

 エンデは、日本とも関係が深く、奥さんは日本人で、信州・黒姫高原には「黒姫童話館」があり、多くの資料が収集されています。

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 『モモ』は、エンデの代表作で45年以上前に書かれた本です。

  物語を要約すると、時間泥棒に盗まれた時間を人間に取り戻す、女の子の不思議な物語です。小学生高学年以上を対象とした本だそうですが、時間の真の意味を考えるために、大人が読んでも良い本ではないかと思います。

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 私が『モモ』を読んだのは、エンデが1955年に亡くなった後の1997年(平成7年)頃だと思います。

 今回、改めて読み直して「盗まれた時間」について考えさせられました。

 物語のテーマである「時間」は、社会経済活動の重要なファクターです。私たちは生活を豊かにするために、時間を必死に節約して来ました。しかしそれが時間に追い立てられる日常生活になり、人間として豊かに生きることが疎かになって行ったように思います。

 私も仕事のために時間を縮めることも多く、知らず知らずのうちに、時間を盗む不気味な「灰色の男(時間貯蓄銀行」に、時間を奪われていたのでしょう。

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 モモの周囲の大人や友達が、だんだん時間を奪われて行きます。モモは、この灰色の男たちから必死に逃れて、神秘な「時間の国」に辿り着きます。そこで時間を司るマイスター・ホラから、時間の意味を教えられます。

「・・人間には時間を感じとるために心という言うものがある。そしてもしその心が時間を感じとらないようなときには、その時間はないもおなじだ。・・」(「第12章モモ時間の国につく」)より)

 モモは、人間ひとりひとりに与えられている時間の豊かさ、美しさを知ります。そして時間泥棒「灰色の男」から時間を取り戻します。

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 物語の最後に「 作者のみじかいあとがき」には・・

 謎めいた旅行者の話として

 『‥過去におこったことのように話しましたね。でもそれを将来おこることとしてお話ししてもよかったんですよ。』

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 私は、退職して数年になりますが、盗まれた時間をどれほど取り戻したのだろうか・・

 「時間」とは、心の中にあり、心の在り方こそ大切で、それが時間と本質的に付き合う方法かも知れません。

 『モモ』は、我々に「人の生き方や世の中の仕組みを見直そう」という大きなメッセージを、我々に投げかけているように思います。

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 今のような絶対時間ではなく、太陽の出入りを基準にした自然の時間の中で生活していた江戸時代。

 一茶は、小さな動物へ眼差しを向けたばかりではなく、時代(世直し)についても詠んでいます。

 

  今夜から世が直るやら鐘冴える

         一茶『七番日記』

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  自然のままの不思議な少女「モモ」は、

  浮浪児で汚れた継ぎあての服を

  着ていましたが、

  白磁の花入れを、こんなイメージで華やかに

  装ってみました。

 (使い古したワイシャツとのコラボ)

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 「灰色の男」は、少し粗目の土で

 荒廃した雰囲気にしました。

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 この亀は、黒須田川に生息している亀です。物語では、亀の種類は書かれていませんが、名前は「カシオペィア」で、モモを助けたり「時間の国」への道案内をしたり活躍します。会話の時は、いつも甲羅に、こんな文字が光ったのだろうか。

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