涼しい川風が吹き上げてくる黒須田川の遊歩道を歩いていても、木陰を求めてしまうほどの暑い日が続いています。
その30℃を超える暑さの中で、東京オリンピックが開催されています。
選手たちは、この高温多湿の気候とも闘っています。
一茶の『享和句帖』の中に、こんな句がありました。
涼しさは黒節だけの小川哉
「黒節」とは『原色牧野植物大圖鑑』北隆館・平成9月刊 によると「フシグロセンノウ(節黒仙翁)」のことで、高さ70cmほどの朱赤色をした5弁の花です。江戸時代に渡来し鑑賞用に栽培され、夏から秋に咲きます。「黒節」は、節が膨らみ紫黒色を帯びます。和名は、この黒い節に基づいて付けられています。
一茶は、園芸の趣味もあり、自宅で栽培していたのかも知れない。近くの小川にも植えていたのでしょう。
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この暑さの中、家近くの黒須田川では・・梅花藻の白い花が涼しげに・・
水の中では、亀の親子が・・
この日は水が少し濁っており、可愛い子亀が見えません。
今年は3組目のカルガモの家族が誕生しました。水辺の危険な場所で遊ぶ子どもたちを心配そうに見守る母親・・
黒須田川で、一番涼しさを愉しみながら、楽しく飛び回っているのは「羽黒トンボ」です。今年も沢山誕生しました。
蝶々のようにヒラヒラと飛び、足元に絡んでくる人懐こいトンボです。
ほとんどのトンボは、木などに止まっても翅を閉じることは少ないです。しかし羽黒トンボは、止まると翅を閉じたり、広げたりします。これは体温調節をしているように見えます。時々、飛びながら水面に触れて波紋が起きたりしています。
広げた瞬間の美しい翅の姿を撮えてみました。
ばん石にかぢり付たるとんぼ哉
一茶『七番日記』
蜻蛉や二尺飛んではまた二尺
一茶『文化句帖』
づぶ濡れにぬれてまじまじ蜻蛉哉
一茶『七番日記』
時には、涼しい色をした「アオスジアゲハ」と・・アートのようです。
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羽黒トンボの求愛活動も激しくなります。
とうとう絡み合った闘いになっています。
闘いで翅が傷つきました。でも愛し合う二匹は、ハートの形になりました。
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2018年6月26日のブログで紹介しましたが、「羽黒トンボ」は「神様トンボ」とも呼ばれます。それは、翅を開いたり閉じたりする様子が拝んでいる姿に見えるからだと言われます。
翅を広げて水草の上に産卵します。
この水草は、白い可愛い花を咲かせている「梅花藻」です。
母(雌)は、何度も何度も、翅を開いたり閉じたりします。その姿は、生れてくる子供への祈りのようにも見えます。
来年には、新しい生命が誕生します。
羽黒トンボは、東京都のレッドデータリストでは「絶滅危惧Ⅱ類」、神奈川県では「要注意種」となっています。
羽黒トンボ、そして水辺の多くの生き物たちが、生きていける自然を守っていきたい。
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