入梅

 昨日、市立図書館の閲覧室が利用できるようになったので、3ケ月ぶりに図書館に行きました。開館を待ちわびた人々が、数冊の本を抱えている姿が多く見られました。

 横浜は、この2日間は真夏日となりましたが、暑さの中、商店街も少しずつ賑わいが戻りつつあるようです。日陰を探しながら、日頃よく行く古書店で、アンコール復刊された岩波新書の『植物たちの生』沼田真著(1917-2001・生態学者)を購入しました。

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  お花屋さんは、ガーデンパラソルで日陰が作られていました。こんな声が聞こえるようです。
 涼しさに一本草もたのみ哉
         一茶『七番日記』

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 歩道に置かれた商品は、強い日差しを避けるために日傘を被っていました。

  白笠や浅黄の傘や東山

         一茶『文政句帖』

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 今日、関東地方は、梅雨入りの発表がありました。

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 そして6月11日は「傘の日」です。

 梅雨に入ると欠かさず持ち歩くのが「傘」です。

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 この日が出来たのは、1989年、日本洋傘振興協議会が、暦の上で入梅にあたる6月11日を「傘の日」と定めました。

 「傘」は、梅雨の季節の必需品です。その傘の促進販売と使い方、機能性など傘の持つ魅力を紹介するのが目的だそうです。

 最近は、男性が日よけのために日傘(雨傘?)をさしているのを見かけるようになりました。「傘」の使い方にも変化があるようです。

 よく利用する「ビニール傘」は、1958年、日本で発明されました。日傘としては、難がありますが、雨具としては安価で使い易く普及率は高いようです。

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「傘の歴史」は、古くエジプト・オリエントの時代から使われていた道具で、当時は日よけの道具で、雨具ではありませんでした。

 日本へは、飛鳥時代に中国から和傘が入り、平安時代には、高い身分の人が使用していました。江戸時代に入り、現在まで続く和傘の製法が確立、安価で大量に作られ、雨具として使われるようになりました。それまで一般庶民は「菅傘」や「蓑」で雨を凌いでいました。

 和傘の種類には、野点傘、雨傘(番傘・蛇の目傘・羽二重など)、日傘、舞傘などがあります。1925年に作られた童謡の『雨ふり』北原白秋作詞・中山晋平作曲)で知られた蛇の目傘は、私の幼いころの懐かしい歌です。

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 この和傘(蛇の目)は、妻が50年ほど前に購入したものです。

 ほとんど使用されていませんが、経年変化で油質の紙は傷みはじめています。

 開くといい油の香りがします。「荏油(えごま油)」でしょうか?半世紀が経ってもいい香りが残っていました。

  あぶら引傘の匂ひや草いきれ

      俳諧職人づくし』より

 内部は、細かい糸装飾が施されています。

  傘はりやかがりも錦冬紅葉

      俳諧職人づくし』より

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 和傘と洋傘の違いは、見ればすぐ分かりますが、大きな違いは素材で、洋傘はビニール、ポリエステル、スチールなどの人工素材です。和傘は和紙、竹、木などの自然素材が使われています。また骨の数も和傘の方が多いし、畳み方も違います。 

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 手元ロクロは、すべての傘骨を束ね柄竹(芯棒)に連結する部分です。

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「石突き」は、和傘と洋傘では真逆です。 

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 日常、和傘を使うことは、ほとんどなくなりましたが、古い旅館などでは、外出用に旅館名が書かれた番傘(蛇の目傘)が置かれていたりします。

 一茶の時代にも、商家がお客様に傘を貸し出していました。その紛失防止のために屋号や家紋とともに番号が付けられていました。 

 五月雨や借傘五千五百ばん

        一茶『西国紀行』

 「五月雨」とは、新暦の5月下旬から7月上旬あたりに相当します。

 田植えの時期は、稲にとって水は大切です。しかし、最近は環境の変化により大雨になり被害が出たりして心配です。

 「恵みの梅雨」であって欲しいと祈ります。

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  傘形焼締瓶

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   口径:  3.2cm・高さ:24.2cm

  高台径:10.5cm・重さ:1490g

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