観天望気2020

『或る燕が或る鶯に、自分のように人間たちと同じ屋根の下で住んで、彼らと一緒にお暮らしになりませんかと誘いました。すると鶯は「私は私の身に昔起こった不幸の苦しみを思い出したくありません。私が人里離れたところに住んでいるのもそのためですわ。」と言いました。』

 この鶯と燕との会話は『イソップ寓話集』(山本光雄訳・岩波文庫から引用しました。

 ツバメにとって、人間と同じ屋根の下に、巣を作ることは安全な生活なのでしょう。

 

 来る日から人見しりせぬ乙鳥哉

           一茶『文化句帖』

 今年も、駅の構内にある巣(昨年と同じ場所)に戻ってきました。親ツバメは、前の巣に戻って繁殖することが多いそうです。

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 駅員さんの好意でしょうか。早速「落し物(フン)」の注意書きが張り出されました。

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 5月12日、巣籠りが始まりました。

 私が確認したのが、この日が最初で、以前に抱卵していたかも知れません。

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 5月25日、2週間近くなり、雛が生れたようです。今年は暖かい日が多かったためでしょうか、育ちが早いように思います。

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 安全な場所とは言え、親ツバメは監視を怠りません。

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 5月27日

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 5月29日 、通行人の眼が、自然と上を向きます。

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 スマホを構える人たちの顔も、自然とほころびます。

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 6月1日、5人兄弟か?5人姉妹か?

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 大きく成長、もう巣の中では身動きが取れません。

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 とうとう一番元気なお兄さんが、追い出されてしまいました。

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 6月6日、4匹です。あの元気なお兄さんが、巣立ったのでしょう。

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 早くも藁を加えて、新しい巣の準備かな。

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 1匹、1匹と・・巣立っていきます。

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 6月12日、残った3匹も元気に巣立っていったようです。


 いつの間に乙鳥は皆巣立けり
          一茶『西国紀行』

 

 この巣は、来年まで住む家族(鳥)はいなくなります。

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 いま、ツバメの生活環境は、大きく変化して来ています。

 神奈川県では「近年は建築物の構造変化により営巣環境が著しく悪化するとともに、エサや巣材の供給源である農耕地の減少が顕著のため、特に都市部で分布域及び個体数の減少」が見られることから、2006年以降、ツバメは、種単位で減少種として指定されています。

 私の住んでいる地域において、今もツバメたちの生活に出会えることは、幸せなことかも知れません。

 私はツバメの鳴き声を、まだ聴いたことがありません。
 「聞きなし」によると
 『土食って虫食って口渋い』と聴こえるそうです。

 南の国に帰る前に聴ければいいのですが・・

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 白釉ぐい飲み

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