先日、2016年に7月に開館した「藤沢市藤澤浮世絵館」の
企画展『 北斎と北斎派の江の島 』を見てきました。
神奈川県の藤沢市は、江戸時代には東海道藤沢宿がおかれ、
大山詣での入口として、また風光明媚な行楽の地であった江の島など、
浮世絵に多く描かれて来ました。
展示は、広重の描く人物東海道五十三次、藤沢宿、江の島と弁財天、
企画展コーナーから構成されていました。
江の島を描いた浮世絵を見る機会がなかったのですが、
当時の江の島詣の人々の様子や賑わいが良く分かりました。
現代でも江の島の人気は変わらないようです。
今年は「戌年」であり、犬の版本も紹介されていました。
葛飾北斎の『北斎漫画』は良く知られていますが、
次のような作者の「犬」の版本が展示されてありました。
「花鳥山水早引漫画」葛飾為斎 作
「立斎草筆画譜」二代歌川広重 作
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また本屋に行くと犬に関する本が目につきます。
私は犬を飼ったこともありませんし、
犬については、ほとんど知らないことばかりです。
まず、次の2冊から読み始めました。
『犬の消えた日』( 井上こみち著・幻冬舎文庫・平成19年2月刊 )
『ダメ犬 グー 11年+108日の物語』( ごとうやすゆき著・幻冬舎文庫・平成18年9月刊 )
『犬が消えた日』は、戦時中の「飼い犬の供出・献納」に基づいた
犬の知られざる実話で、戦争のためにペットが殺戮される悲しい物語です。
しかし私には、戦時中、犬に助けられた記憶があります。
昭和20年、私が4歳の時、住んでいた町に空襲があり、
沢山の焼夷弾が投下され、家が焼かれ、周りは火の海となりました。
母は妹を背負い、私の手を握り締め引きずりながら
炎の中を逃げ惑っていました。
その時、目の前に黒い影が現れました。隣りの材木屋の老犬でした。
老犬は火傷をしフラフラしながら、ある方向に走って行きます・・・
母は無意識に、その老犬に引っ張られるようについて行ったそうです。
するといつの間にか、火の気の少ない川辺りに出ており、
焦熱の中から脱出することが出来たのです。
そして熱気から逃れるために、川の中に数時間浸かっていました。
・・・・・・
「隣りの老犬が私たち親子を、炎の中から救ってくれました」と
母が話してくれたことを思い出します。
その老犬の名前、そしてどんな種類の犬だったかも忘れましたが、
私たちには、忘れられない命の恩人・・「命の恩犬」です。
『ダメ犬 グー 11年+108日の物語』は
単純で柔らかい線の中に、暖かい雰囲気と親しみの溢れる犬のイラストと共に、
愛犬と過ごした幸せな日々・・
そして病気で亡くなるまでを愛情を込めて書かれています。
この本文のイラストを描いたのは、
以前に紹介した写真集『PHONE EYE』の長尾浩介さんのイラストでした。
このイラストの「グー」は、戦時中に私たちを助けてくれた老犬に、
よく似ているように思えてなりません。
茨垣や上手に明し犬の道 一茶 (『文政句帖』)