我が家に6月、二人目の孫が誕生しました。卯年にあやかったのか、蹴る足の動きが活発で、将来はスポーツ選手か?と・・「ジジ馬鹿ちゃんりん」になっています。
あと10日余りで「卯年」は終わります。本箱をいろいろと整理していたら「うさぎの絵本」が、いつの間にか増えていました。
私の子供の頃は、ウサギが出て来るお話しは「うさぎとかめ」や「かちかちやま」でした。最近の本を読んでいたら「うさぎとかめ」が、もう一度競争したそうですが・・またウサギが負けたそうです。今度は、山の頂上から降りる競争でした。ウサギの後ろ脚は前足に比べると大きく、強いので山を登るのは得意ですが、下り坂では勢い余って転んでしまいます。そして切り株にぶつかり怪我をしたのです。ウサギの脚の構造を知れば、当然の結果です。
また星新一のショートショート『未来いそっぷ』新潮文庫刊 の「ウサギとカメ」では、ウサギはカメの策略で、スピード違反で捕まります。時代とともに童話の世界も変わっていくのでしょうか。
*
ウサギが登場する童話では、宮沢賢治の短編童話『貝の火』が、特に印象に残っています。この絵本は、おくはらゆめさんの絵で、mikihouseから2017年10月に発刊されています。
貝の火とは「蛋白石」のことで、ひとたび得た名声や権威の脆さを、この石になぞられた童話です。大人の童話でもあるように思います。
この「貝の火」に登場するのは「ノウサギ」の家族です。「今は兎たちは、みんなみじかい茶色の着物です」という言葉から始まりますが、このウサギは「トウホクノウサギ」だろうと思います。なぜなら東北地方など積雪地帯に生息する「トウホクノウサギ」は、秋頃から白化が始まり、春頃から茶褐色の毛色になるからです。
この「トウホクノウサギ」について、詳細に観察した日記『ノウサギ日記』高橋喜平著・福音館書店・1983年6月刊 という本があります。
高橋喜平(1910-2006)は、雪氷研究家でエッセイストです。当時、農林省林業試験地に勤務、昭和19年、新潟県十日町試験場に赴任。ノウサギが生息する地に住むようになりノウサギを飼育したくなり、新聞に飼いたいと載せると、地元の人が生後4、5日の可愛い子ウサギ2匹を持って来てくれました。この日記は、昭和29年5月18日から昭和31年1月19日まで、ノウサギを観察した記録です。
兎舎を作り、春夏秋冬と約1年半にわたり行動を観察。ノウサギは夜行性で昼夜関係なく詳細に観察されています。特に子ウサギの生皮は、紙のようにちぎれやすいことなど、身体の知らない特徴や行動など、ノウサギの生態を知ることができました。
最初、2匹の子ウサギは、性別も分からずA、Bと呼ばれていましたが、性別を調べて「リリ(雌)」と「ガン(雄)」という名前がつけられました。今回の表題は、この2匹の名前を使わせてもらいました。
この絵本『のうさぎ』高橋喜平(文)/薮内正幸(絵)福音館書店・1973年2月刊。薮内さんの描かれた繊細な絵は、すべて白黒ですが、活き活きとしています。『ノウサギ日記』に登場した「リリ(雌)」と「ガン(雄)」ではないだろうかと思ってしまいました。
最後には、2匹とも兎舎の金網を破って、天敵のいる野生の世界に返って行きました。ナチュラリスト高橋喜平さんにとっては、こうしてやることが最良であったのでしょう。そして最後に逃げたガンに向かって・・
「ガンよ、いい青春をおくっておくれ。ガンよ、自由な大地をかけめぐってくれ。」
*
ウサギには「カイウサギ」と「ノウサギ」がいます。私たちがよく知っているのは「カイウサギ」で「ノウサギ」の生態については殆ど知りません。
横浜市旭区の「横浜市立よこはま動物園ズーラシア」に、飼育されている「トウホクノウサギ」がいるので見に行って来ました。
大きなケージの中に2匹いました。冬季に入るので全身の毛衣が白化していました。
(注)うさぎの数え方は、今は「匹」で呼んでいますが、「羽」と呼ぶこともあります。
2匹ともに雌で、誕生日は同じ日で「なずな」と「すずな」という名前だそうです。
ノウサギは、ペットとして飼われている「カイウサギ(アナウサギ)」とは、少し生態が違います。ノイサギは、足が長く筋肉質でより速く走れる体つきをしていて、天敵の追跡を振り切るまで走るそうです。
2匹とも、ほとんど動かず、時々耳を立てて周りを警戒しているようです。
時には足を舐めたりして、可愛らしい仕草をします。
*
現在、世界のどこかで紛争や戦争が起きています。そして尊い命が失われています。どうしても、この本だけは忘れたくはありません。高木敏子さんの『ガラスのうさぎ』です。
先日、『ガラスのうさぎ』を抱いた少女の像を見にJR二宮駅を訪ねました。駅の南口を出たところに像はありました。
永遠の平和を願う人々の寄付で1981年に建てられました。
高木さんは、1945年8月5日、二宮駅周辺を襲った米軍の機銃掃射で父を亡くしました。少女像は、父の形見となった「ガラスのうさぎ」を抱いた防空ずきんにもんぺ姿の高木敏子さんです。
*
*