黄鶺鴒

 9月に入っても真夏日が続いていますが、植物たちは、季節の移り変わりを感じているようです。散歩中に川底に咲いている「彼岸花」を見つけました。咲いていたのはこの一か所だけです。

 「彼岸花」は、9月20日の「誕生花」です。

 秋風やむしりたがりし赤い花

         一茶『おらが春』

 この句は、前書きに「さと女卅五日 墓」と記されています。亡くなった娘の墓参の途中で、秋風に揺れる赤い花を思い出して詠んだのでしょう。「赤い花」とは「彼岸花」のことでしょう。

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 9月8日から23日は、二十四節気の「白露」にあたります。その次候は「鶺鴒鳴く」です。

 鶺鴒の来鳴く此頃

   藪柑子はや色づかね

     冬のかまへに

      伊藤佐千夫『佐千夫歌集』岩波文庫

 「鶺鴒」は、日本神話のイサナギイザナミに男女の交わりを教えた鳥で知られています。神話に登場したのは「黄鶺鴒」ではないか?とも言われています。

 鶺鴒は留鳥で年中見られますが、黒須田川付近で見ることができるのは「白鶺鴒」「背黒鶺鴒」「黄鶺鴒」の3種類です。「黄鶺鴒」は、川の上流付近でよく見かけます。この「黄鶺鴒」は、9月20日が「誕生鳥」でもあります。

 この美しい黄鶺鴒を「渓流の貴婦人」と呼んでいる人もいます。

 私も、黒須田川に飛来する「黄鶺鴒」を「渓流の貴婦人」と名づけたい。

 ふっくらとした黄色の羽毛に包まれた可愛らしい幼鳥です。

 鶺鴒の「チチィ」「チチチィ」と高く鋭い囀りが、秋の涼しい空気を運び、澄んだ秋空に響く、そんな気候に早くなって欲しいと思います。

 秋の天小鳥ひとつのひろがりぬ

         一茶『化五六句記』

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