黒須田川と谷本川(鶴見川)とが合流するところにある堰で「ゴイサギ」をよく見かけます。夜に活動をする鳥が、炎天下の昼間に、じっと動かないで立っているのは異様に見えます。
この日は、成鳥と一緒に若鳥(写真右下)がいました。
ゴイサギは、夜にゆっくりと飛びながら「グァー」「ゴァー」と鳴きます。私は、まだ夜に泣いている声を聴いたことがありません。サギの鳴き声は、不気味で憂鬱だと嫌う人がいますが、小説家・詩人の中勘助(1885-1965)は、サギの鳴き声を・・
松の林に 鷺の声す
いざいでてみればや 松の林に
こころよきかな
冷に響なき 石磐の音にさもにたり
わが思にもにたり
いざあととめてゆかな
松の林を
『しづかな流』~鷺~より
(注)「石磐」とは楽器のこと、「磐(けい)は「へ」の字の形の石をぶら下げて、バチで叩いて音を出す中国古代の楽器です。
またこんな諺もあったそうです。ゴイサギの夜に飛び回る習性を逃亡という意味の隠語として使い、結婚してもすぐに逃げ帰ってくることを『五位鷺の嫁入り』と言ったそうです。『鳥のことわざウォッチング』国松俊英・河出文庫より。
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都会などで見られる身近な鳥は、スズメ、カラス、ハト、サギなどの留鳥が多いです。俳句では、これらの鳥の名前だけでは季語になりませんが、気候や状態を表わす言葉を付けて使われています。それだけ身近で親しみのある鳥なのでしょう。都会では、近くに川や沼がなければ出会うことが少ないサギですが、俳句の世界では・・四季を通じて、いろいろな情景が詠まれています。
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黒須田川は、サギの好きな魚(オイカワ)が豊富なのでよく飛来します。その川が、先日の台風13号が過ぎた後、川の水が一面緑色となっていたので驚きました。
山清水人のゆききに濁りけり
一茶『文政句帖』
アオサギは、戸惑っているように見えますが、餌を獲れるのでしょうか。
カワセミは戸惑う様子もなく、餌を獲っているように見えます。
どうして緑色になったのかは分かりません。ネットニュース(日テレNews)で、2023年7月5日に、奈良県生駒市の竜田川が一面に緑色に染まったという記事がありました。原因は入浴剤によるものだそうです。黒須田川も同じ原因かどうか?
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翌日、黒須田川は、少し乳白色になっていましたが、いつもの水量と流れでした。カワセミも元気に飛び回っていました。カメラに収まったのが・・この1枚。
水は綺麗で小さな魚たちも元気でした。
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「景観生態学」という学問があるそうです。その詳細については、専門書に譲りたいと思いますが、自然環境の保護と人間の生活との調和を考えるには、これから必要な研究分野なのでしょう。
私の住む近くの黒須田川は、雨水や湧水の増水から人・家を護る防災の川で、景観はそれほど重視されていません。しかし年々、川に沿って草木が増えると、そこに生きものたちも集まって来て生活の場となります。また鳥なども飛来します。その動植物に囲まれた景色は、人間にとっても憩いや癒しの場所となります。それが自然環境の保護にも繋がって行きます。
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川の色は周りの環境で違って見えることがあります。木々や空が映ったり、川底の藻など違って見えたりします。綺麗な水には魚たちも集まり、いろいろな鳥たちも飛来します。
黒須田川の「水」と「サギ」たちの四季の風景です。
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