庭にきた鳥(2)

 今年は、コロナ禍で工房に行く機会が減っています。偶に行っても庭木の剪定と枯葉の整理や周辺の草の刈込に、ほとんどの時間を費やしてしまいます。そのために、土に触れることが殆どありません。

 庭木も植えてから20年以上が経ち、木の成長によって密になり、太陽が十分に届かない木も増え、その木々の移植をしています。

 太い枝を剪定したモミジなどは、翌日には水を吸い上げ、剪定口から流れ出ています。もう春の兆しを感じさせてくれます。

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 ひと汗流した後は、芝生に座り鳥の囀りに耳を傾けます。

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 今日は、剪定をしなかった梅の木に集まって来た雀たち。少し騒がしいです。この梅の木の下には水飲み場があります。

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 ヒヨドリが水を飲みに来ると、雀たちは一斉にどこかに飛んでいきます。すると裏の雑木林からは、メジロの「チーチー」という鳴き声が聞こえます。

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 ドングリの木に一匹現れました。

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 幹の穴の樹液を吸っていました。 美味しい液があるのでしょう。

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 このドングリの木は、毎年、スズメバチが来て大きな穴を開けました。

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 昨年の11月に、恐る恐るドングリの木に近寄り、堅い幹に穴を開けているスズメバチの活動を撮りました。

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 メジロは警戒心が強く近づくと垣根のサザンカの茂みに隠れてしまいます。

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 羽が葉っぱの色に似ているので見つけるのが難しい。頼りになるのは、微かな葉の動きです。しかし見つけても花の蜜を吸うとすぐ逃げていきます。

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 鳥の巣にあてがふておく垣根かな

          一茶『文化句帖』

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 小説家・庄野潤三さんの本に『メジロの来る庭』文芸春秋社・平成16年4月刊)というエッセイ風の私小説があります。

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 多摩丘陵の丘の上の家で、晩年の庄野夫婦の穏やかな日々が、日記風に綴られています。家族、隣人、そして友人と過ごす日々。そして庭の花木や遊びに来る鳥たちの様子など、季節の彩に囲まれた家族の風景が満ち溢れた作品です。

 この庄野さんが生活されていた小田急生田駅周辺は、私が20代の頃に生活していた所でもあり、知っている地名や店屋の名前が出ると懐かしく、当時の街の風景を思い出しながら読みました。

 読んで特に印象に残ったのは「ハーモニカ」です。庄野さんがハーモニカを吹き、奥さんが唱歌、童謡を歌う日々が何度も出てきます。

「夜、一日の仕事が終り、あとは、風呂に入って寝るだけというときに、妻は書斎からハーモニカの箱を取って来て居間のこたつに置く。私が二人の好きな昔の唱歌、童謡を吹き、妻が歌う。」

 10年近くやっていた日課で、2月は「早春賦」、9月は「赤蜻蛉」が一番のお気に入りだったそうです。

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 書名となった「メジロ」については、本の最初に、庭の水盤に来て飛び込み、六回も水浴びをするメジロの様子が描かれています。その他にもムクドリツグミシジュウカラコジュケイなどが、庭の水盤の水を飲みにやって来ます。

 また枝に吊るした餌の牛脂を食べる鳥たちのことも・・

「朝の「家歩き」のとき、ムラサキシキブの枝のかごの牛脂にシジュウカラ一羽きて、つつく。その間、よこの侘助の枝でメジロが一羽、順番が来るのをおとなしく待っていた。」

 「あとがき」では、庄野さんは仕事を続けられたのは、庭に餌を求めて楽しそうにやって来る野鳥たちのお陰だと・・

 そして「この庭木とそこに集まる野鳥にも「ありがとう」とお礼をいいたい」と書いています。

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 引き出しを整理していたら、古いハーモニカを見つけました。

 ハーモニカの哀愁感のある音色が好きで、窯焚きをしながら童謡を吹いたりしています。

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