今の季節を、時候の挨拶文では「万緑の候」という言葉で表現します。
草木の葉が、緑色いっぱいに輝く、美しい季節です。
緑色は安らぎと、そして目を癒してくれる色でもあります。
この風景は、我が家の居間から見える広場の樹木です。
太陽光によって木の葉の色が、薄い緑から濃い緑に変化して楽しませてくれます。
*
これは「松の新芽」です。
「みどり」とは、もともと色を意味する言葉でなく、新芽を意味し、そこから転じたと言われています。
私たちは、緑色を表現するのに身近な植物の名前に当て嵌めて呼んでいます。
例えば、若竹色、松葉色、蓬色、柳色、木賊色、苔色など挙げれば切がありません。
しかし、「 緑」と「青」は、混同して使われています。青信号、青林檎、青海苔、青虫、青々とした芝生など、実際は緑ですが青と表現しています。
これは、昔、色は赤、青、黒、白の四色で表現していたので、緑は青に近いので青と表現していたことなのでしょう。
「みどり」を使ったこんな表現もあります。
生れたばかりの子どもを「嬰児(みどりご)」とか、黒く艶のある女性の美しい髪を「みどりの黒髪」と表現したりします。
みどりご(みどりこ)の由来は、701年制定された大宝令で三歳以下の男児・女児を「緑」と称するという規定があったことによるそうです。
*
現在、柳の木を見ることは少なくなりましたが、禅語に『柳緑花紅』という言葉あります。美しい風景を形容する言葉で、自然の姿が「あるがまま」に表現されているという意味です。柳は「みどり」の代表だったのでしょう。
陶になる下地をくねる柳哉
一茶 『文政句帖』
「陶(すえ)」とは器のことなのか、それ以外の焼き物なのか定かではありません。
しかし、一茶は園芸の趣味があり、この陶は植木鉢ではないかと思います。
江戸時代は、園芸文化が流行っており、いろいろな植物の絵が描かれた植木鉢も多く作られていました。
一茶は、植木鉢に描かれた柳の絵が、気にいったのかもれない。
*
焼き物で、緑と言えば「織部焼」です。
織部釉は、鉛釉に呈色剤として微量の銅が加えられると、緑色に発色する化学的な色です。
総織部平皿
高さ:3.1cm・径:19.1cm・重さ:480g
*
*