万緑

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  今の季節を、時候の挨拶文では「万緑の候」という言葉で表現します。

 草木の葉が、緑色いっぱいに輝く、美しい季節です。

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 緑色は安らぎと、そして目を癒してくれる色でもあります。

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 この風景は、我が家の居間から見える広場の樹木です。

 太陽光によって木の葉の色が、薄い緑から濃い緑に変化して楽しませてくれます。

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 これは「松の新芽」です。

「みどり」とは、もともと色を意味する言葉でなく、新芽を意味し、そこから転じたと言われています。

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 私たちは、緑色を表現するのに身近な植物の名前に当て嵌めて呼んでいます。

 例えば、若竹色、松葉色、蓬色、柳色、木賊色、苔色など挙げれば切がありません。

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 しかし、「 緑」と「青」は、混同して使われています。青信号、青林檎、青海苔、青虫、青々とした芝生など、実際は緑ですが青と表現しています。

 これは、昔、色は赤、青、黒、白の四色で表現していたので、緑は青に近いので青と表現していたことなのでしょう。

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 「みどり」を使ったこんな表現もあります。

 生れたばかりの子どもを「嬰児(みどりご)」とか、黒く艶のある女性の美しい髪を「みどりの黒髪」と表現したりします。

 みどりご(みどりこ)の由来は、701年制定された大宝令で三歳以下の男児・女児を「緑」と称するという規定があったことによるそうです。

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 現在、柳の木を見ることは少なくなりましたが、禅語に『柳緑花紅』という言葉あります。美しい風景を形容する言葉で、自然の姿が「あるがまま」に表現されているという意味です。柳は「みどり」の代表だったのでしょう。

 陶になる下地をくねる柳哉 

        一茶 『文政句帖』 

 「陶(すえ)」とは器のことなのか、それ以外の焼き物なのか定かではありません。

 しかし、一茶は園芸の趣味があり、この陶は植木鉢ではないかと思います。

 江戸時代は、園芸文化が流行っており、いろいろな植物の絵が描かれた植木鉢も多く作られていました。

 一茶は、植木鉢に描かれた柳の絵が、気にいったのかもれない。

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 焼き物で、緑と言えば「織部焼」です。

 織部釉は、鉛釉に呈色剤として微量の銅が加えられると、緑色に発色する化学的な色です。

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織部平皿
  高さ:3.1cm・径:19.1cm・重さ:480g

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