飛ばない鳥

 先日、図書館の帰りに、日本では野毛山動物園にしかいない「飛ばない鳥・カグー」を見に行きました。園内は、夏休み中なので子ども連れの家族で賑わっていました。「カグー」は、鳥図鑑などで知っていたのですが、見るのは初めてです。

 この動物園には、子供と何度も来ました。園内に入るのは45年ぶりとなります。インド象「はま子」はいなくなり、園内も模様替えされていました。

 カグーの鳥舎は、「ペンギン」舎の傍にありました。

 カグーの大きさは、50cmほどで全体が灰色で、目が赤く、嘴も赤色をした可愛らしい鳥です。雄2匹が枯葉の下の虫を啄んでいました。名前が付けられており、左が「ムラリン」、右が「ミドリン」です。(足環の色で呼んでいるのでしょう)

 美しい冠羽は、威嚇する時や求愛の時に逆立つそうです。

 このカグーは、横浜市の市制100周年の1989年に、南太平洋に浮かぶニューカレドニアから寄贈されました。

 カグーという名は、ニューカレドニア先住民族が名づけたといわれています。固有種で絶滅危惧種に指定されています。今は保護が進み個体数は増えているそうです。

 野毛山動物園横浜市の繁殖センターは、飼育繁殖に取り組み成果を上げてきました。その「繁殖賞」が園内に紹介されていました。

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 「飛ばない鳥」とは、進化の過程で飛ぶ能力を失った鳥たちのことです。世界には40種類ほどいるそうです。進化の過程で、棲息環境によって、地上を走る鳥に(ダチョウなど走鳥類)、水中を飛ぶ鳥に(ペンギン類)、飛ぶことをやめた鳥に(島で暮らす鳥)、そして人間に飛べなくされた鳥(ニワトリなど家禽)にと、それぞれ進化したと言われます。

 カグーは、天敵がいなかった小さな島で、飛んで逃げる必要がなかったので飛ばなくなったのです。沖縄のヤンバルクイナも飛ばない鳥の仲間です。

 時々ジャンプする姿は、とても可愛らしいです。

 餌を獲る嘴は泥だらけです。

 好物のミミズを捕えました

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 人間にとって自分の力で空を飛ぶことは憧れです。飛ぶことが出来ない動物にとっても、飛ぶことに憧れるのでしょう。イソップ寓話「亀と鷲」の話はよく知られています。

 全く飛べない動物たちが、飛べる鳥に飛ぶことを教えた物語があります。その本はミュージカルにもなった『カモメに飛ぶことを教えた猫』ルイス・セプルベタ・河野真理子訳・2005年11月白水社です。

 内容は、海面に広がった原油によって瀕死となったカモメが、港街ハンブルグの雄猫に卵を託します。託された猫は、仲間たちと無理難題を解決して雛を育て、そして飛び方を教えます。種の違いを越えた友情と家族愛による動物ファンタジーです。

 環境汚染のこと、主義主張の違い、文化の違いがあっても分かり合えることの尊さなど、いま世界で起きていることを、いろいろ考えさせられます。世代を越えて読んで欲しい本です。

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「飛ばない鳥」カグーは「幸福を呼ぶ鳥」とも呼ばれているそうですが、大空へ飛び立ったカモメの名前は「フォルトゥナータ」・・「幸福な者」という意味です。

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