クサギ

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 この草花は、道端や草原でよく見かける「ヘクソカズラ(屁糞葛)」といいます。草や木に絡みついて成長する美しい花です。

 なぜこんな名前がついたのでしょう。それは若葉の時に葉や茎を揉むと嫌な臭いがするからです。この臭いは「メルカプタン」と言い、おならや便の臭いの原因となる物質だそうです。この臭いは、葉を虫たちに食べられないための植物の生きる知恵かも知れません。

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 この白い花は「クサギ」の花です。

 この落葉低木は、私が散歩する黒須田川のコンクリートブロックの隙間から自生しています。

 花は五弁で良い香りがしますが、葉や枝を傷つけると悪臭を放ちます。それで「臭木」の名がつきました。「常山木」とも書き、俳句では、この字を使ったりします。

 どうして「常山木」をクサギと読むのかというと、中国では「海州常山」と呼ばれ、渡来した時に他の花と間違えて使用されたのではないかと言われています。

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 若葉は食べられるそうです。また乾燥させて煎じて民間療法にも使われています。

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 秋になると赤い萼の先に青い実がつきます。その実は青色の染色の材料になります。

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 ある資料には、下駄の材料の一つに挙げられていました。下駄になるほどの太さの木になるのだろうか。

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 8月上旬を過ぎると、花が散り始めました。

 寺田寅彦の随筆集第一巻岩波文庫

「・・一株の大きな常山木があって桃色がかった花がこずえを一面におおうていた。散った花は風にふかれて、みぎわに朽ち沈んだ泥船に美しく散らばっていた。・・」(「花物語」~常山の花~より)

と昆虫捕りにいった城山の思い出の中で書いています。

 この黒須田川のクサギの花も美しく散らばっています。そして羽黒トンボの避暑地ともなっています。葉が落ちた枝は、カワセミの止まり木となります。

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 身近で嫌な臭いのする虫と言えば「カメムシ」です。そのカメムシクサギという名がついたカメムシがいます。

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 このカメムシは、ソメイヨシノの幹で交尾中の「キマダラカメムシ」です。

クサギカメムシ」によく似ていますが「クサギカメムシ」ではありません。その違いは「クサギカメムシ」には、頭から背中にかけての黄色い線がありません。

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 虫の屁を指して笑ひ仏哉

       一茶『八番日記』

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 追伸 2021/8/14

 以前に撮影した虫の中に「クサギカメムシ」を見つけました。

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