とんぼの はねは
みずの いろ
みずから
うまれたからかしら
とんぼの はねは
そらのいろ
そらまで
とびたいからかしら
『まど・みちお詩集』(ハルキ文庫)より
この詩は、まど・みちおさんの「とんぼの はねは」という詩です。
透き通ったトンボの翅を眺めていると、年とともに失われた大切なものを教えてくれるように思います。
見た目は弱々しく見える翅ですが、軽くて丈夫に出来ています。その構造は、翅脈(しみゃく)というスジが、網の目のように骨組みされており、その間を透明な膜が張られています。
黒須田川の水辺では、羽黒トンボと一緒に、馴染みのあるシオカラトンボが飛び交っています。
9月の4連休では、公園などで白い虫取り網と籠を持った親子が虫取りを楽しんでいる姿を見かけました。
私の小さい時は「とりもち(樹皮に含まれるゴム状の粘着性の物質)」を竹竿に巻き付けて、竿を振り回して捕らえた記憶があります。捕らえたトンボを「とりもち」から外す時は、少し可哀そうに思えました。
また「とりもち」による鳥の捕獲は禁止されていますので、虫取りにも使われることはないと思います。
江戸時代頃から伝承されてきた「トンボつり(ブリ)」という方法があるそうです。私は経験がありませんので、その作り方を調べてみましたが、トンボに向けての投げ方が難しいようです。
加賀千代女(1703-1775)の有名な句「トンボ釣り今日はどこまで行ったやら」には「トンボ釣り」が表現されています。この方法だったのでしょうか。
シオカラトンボの雄は、若い時は黄褐色と黒い模様の麦藁色をしています。成熟するにつれて体は黒くなり、白い粉を帯びてきます。これを塩昆布に見立てて「シオカラ」と名づけられたようです。
雌は成熟しても麦藁色のままです。「ムギワラトンボ」とも呼ばれています。
トンボは肉食性の昆虫で、空中で素早く餌ものを捕まえます。
捕らえたのは、好物の蛾のようです。鋭いトゲのある6本の脚で、しっかりと獲物を掴んでいます。
*
このトンボは「シオカラトンボ」より胸・腹が濃い青色をしています。「オオシオカラトンボ」といいます。
シオカラトンボとの違いは、翅の付け根が黒くなっているところです。
大きな複眼もトンボの特徴で、シオカラトンボの雄雌では複眼の色が違います。そしてこの大きな複眼には、小さな個眼が1~3万個も集まって作られているそうです。上にある個眼は遠くを、下にある個眼は近くに焦点が合うそうです。
小林一茶は、このことを知っていたかのか、どうか・・
遠山が目玉にうつるとんぼかな
『八番日記』
あの騒がしかった油蝉の鳴き声が、いつの間にか「つくつくほうし」の鳴き声に変わって来ています。「つくつくほうし」は「寒蝉」とも呼ばれます。
小学校2年生の教科書『国語・下』(光村図書)に、まど・みちおさんの詩「赤とんぼ」が載っています。
つくつくほうしが
なくころになると
あの ゆうびんのマークが
きっと 知らせにきます。
金色の空から
もう あきですよ・・・・って。
黒須田川の遊歩道にも、秋の気配が訪れています。
「シオカラトンボ」から「ゆうびんのマーク」が飛び始めます。
現在、知らせに来るのは、インスタ映えのメールかもしれません。
*
*
<追伸>
今日(2020/9/27)黒須田川を散歩中、遊歩道の手すりに止まっている本人に会いました。
*
*