カワセミを撮る

  先日、東京ミッドタウンにあるFUJIFILM SQUARE 写真歴史博物館で開催されている「100年前にカワセミを撮った男・下村兼史~日本最初の野鳥生態写真家~」企画写真展に行って来ました。

 2年前にも同じテーマで写真展が開催されたそうです。今回もコロナ禍の影響で2ケ月遅れの開催となったようです。

f:id:kanamankun:20200917133040j:plain

f:id:kanamankun:20200917133107j:plain

 この写真展で、初めて写真家・下村兼史(1903-1967)さんを知りました。

f:id:kanamankun:20200917133013j:plain

 会場には、下村さんのオリジナルプリントを中心に約50点の作品が展示されていました。その中に日本野鳥生態写真史において記念すべき歴史的な1枚となった「100年前のカワセミ」を撮った写真がありました。

 この写真(モノクロ)を見た時に、野生生物カワセミと撮影者下村さんとの間にある、何とも言えない緊張感と信頼感を強く感じました。自宅の庭に来るカワセミを、何度も見つめ続け、野鳥を愛する眼差しが生れたのでしょうか。今にも飛び立ちそうなカワセミを、シャッター1回きりの制約の中で、自然のあるがままの姿を撮らえています。

 当時は、現在より劣る撮影機材と感光材料で、しかも離れた位置から紐でシャッター(絞りf4.5・1/5秒)を切ったそうです。

 その時の様子を「私はどきどきする胸をおさえて、静かに紐を引いた(展示会のパンフレットより)と書かれています。カワセミの習性や生態を熟知していても、やはり興奮したのでしょう。

 フランスの小説家ジュール・ルナール(1864-1910)も『博物誌』岸田国士訳・新潮文庫の中で、カワセミに出会った時は「息を殺した」・・。それは「近来稀な興奮」であったと書いています。

 特に警戒心の強い野鳥などは、人の姿を見ると逃げてしまいます。野鳥の撮影で近づくことは難しいです。その野鳥に近くで出会うと、息を凝らすることは、よく経験します。

f:id:kanamankun:20200917133138j:plain

 この本では、カメラの傍から見つめた野鳥たち、そして自然への愛情と情熱をかけた下村兼史さんの世界を知ることが出来ます。

 写真だけでなく、文筆やイラストほか、野鳥観察書、鳥類図鑑など、多岐にわたる多くの業績が紹介されています。

   *

 私も家の近くの黒須田川で、カワセミを見つけてからは、時間があればカワセミを撮ってきました。離れていますが、細い木の先に止まっているカワセミに出会うと足の動きが止まりドキドキすることがあります。

 この写真が、初めて自動(AUTO)で撮ったカワセミ(f5.6・1/125秒・ISO500)です。

f:id:kanamankun:20200917133205j:plain

 昨今、野鳥などの動きのある撮影には、ほとんど連続撮影の機能を使用します。あえて連続撮影の機能を使わないで、自分なりの決定的な瞬間を1回のシャッターで狙ってみました。失敗も多いですが、鳥の動きや習性を予測をしての撮影は緊張感があります。

 今回、私なりのカワセミの動きを集めてみました。ボケた映像の中にも、連写とは違ったカワセミの表情や動きが感じられるように思います。

 フィイルム時代に、絞り、シャッター時間を設定したことを思い出してデータを書いてみました。一部トリミングをしているので、このデータは正確ではありません。

   *

f6.3・1/320秒・ISO1600

f:id:kanamankun:20200917133600j:plain

   *

f5.6・1/100秒・ISO800

f:id:kanamankun:20200917134043j:plain

   *

f4.5・1/160秒・ISO800

f:id:kanamankun:20200917134305j:plain

   *

 f6.3・1/100秒・ISO800

f:id:kanamankun:20200917134622j:plain

   *

f6.9・1/400秒・ISO800

f:id:kanamankun:20200917135034j:plain

   *

f5.6・1/100秒・ISO800

f:id:kanamankun:20200917135211j:plain

   *

 次の2点は、AUTO連写撮影で撮りましたが、ボケないためには1/4000秒以上は必要でしょう。

f6.3・1/1000秒・ISO800

f:id:kanamankun:20200917135401j:plain

   *

f6.3・1/1000秒・ISO640

f:id:kanamankun:20200917150808j:plain

   *

 私の好きな一枚は、黒須田川の川底に咲いた「花桃の中のカワセミ」です。 f:id:kanamankun:20200918144540j:plain

f5.9・1/60秒・ISO200

     *

 昨日(9/19)、撮ったカワセミです。

 黒須田川に住むカワセミの環境は、まだまだ残されていますが、大きく変化して来ています。

f:id:kanamankun:20200920115729j:plain

f5.9・1/40秒・ISO400

     *

     *