本箱(9)

 7月10日は、語呂合わせで「納豆の日」と呼ばれています。

 しかし、あまり知られていませんが、「文庫本始まりの日」でもあります。

 1927年7月10日に『岩波文庫』が創刊され、今や、文庫本は単行本よりも親しい存在であるように思います。

 現在、文庫本の出版社は、地方を含めて約40社あり、50種ほど刊行されているそうです。 

 昔の文庫本は文字が小さく、齢を重ねると苦労しますが、最近は、だんだん文字が大きくなって来ており有り難いです。

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 最近、私の本箱に増えている本があります。

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 同じ小型本の仲間の「新書」で、その中の『岩波ジュニア新書』です。

『岩波ジュニア新書』は、1979年6月21日創刊されて、今年で40年になります。 

『 ・・これから人生を歩むきみたちが、生きることのほんとうの意味を問い、大きく明日をひらくことを心から期待して、ここに新たに岩波ジュニア新書を創刊します 』

 この文章は『ジュニア新書の発足に際して』の一部ですが、すべての新書に載せられています。

 若い世代だけではなく、社会人にとっても読み応えがあり、古今東西の学者や賢人の蓄えた知識やノウハウを手軽に得られます。シニア世代の再学習には、最適な新書だと思います。

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 私が最初に読んだのは

 茨木のり子著の『詩のこころを読む』です。

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 丁度、ハングルの勉強中に、併せて『ハングルへの旅』茨木のり子朝日新聞社刊)を読んでいました。そして茨木のり子さんの生き方や考えに共感し、この本を購入しました。

 5つのジャンルに別けて厳選された詩を紹介し、感想そして解説が書かれています。

 吉野弘さんの詩『生命は』では

『 生命は

  その中に欠陥を抱き

  それを他者から

  満たしてもらうのだ

を取り上げて、その感想を次のように書いています。

『・・今ごろになって、ゆきずりの人や知人から受けた、有形無形のすばらしいものを、一つ一つ数えていたりして。』

 この本には、茨木のり子さんの詩は1つも紹介されていませんが、読者が選ぶ新書本の中で上位を占めています。

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 つぎに読んだのは、松中昭一著の

きらわれものの草の話~雑草と人間~』です。

 工房の周りの雑草の処理に苦労している時に、題名に惹かれて手に取りました。 

 しかし著者の意図は『雑草と言う一側面から、農業を知ってもらいたい』と言うことで書かれています。

 役立つ雑草と害、そして防除の手段と利用について分かり易く書かれています。

 雑草は、きらわれものとばかり思っていましたが、雑草についての正しい認識がなかったことを知りました。

 「雑草17話」の中では、身近な草(雑草)について書かれています。詩情豊かなタンポポも牧草地では強い雑草です。土筆、彼岸花シロツメクサなど、身近に生えている草も場所によっては、雑草に分類されます。しかし文学、詩や俳句の世界では嫌われものというより、愛される草(雑草?)とされています。

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 この本で知ったのが「エノコロクサ(ネコジャラシ」の「他感作用」です。

 良く見かける「エノコロクサ」の種類は、穂が垂れているのを「アキノエノコロクサ」といいます。

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 穂が真っ直ぐで垂れていないのが「エノコロクサ」と言います。

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 穂が赤茶色に見えるのは「ムラサキエノコロクサ」といいます。

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 エノコロクサの「他感作用アレロパシー)」とは「植物の生産する物質が、他の個体あるいは他の生物に及ぼす作用」と言われています。

 他感作用のある雑草は、64種ほどあると言われています。

  この「他感作用」を知ってから、 散歩していても雑草を見る目が少し変わりました。

 芝生にはエノコロクサは、ほとんど生えていない。また多くの草が群生しているところにも生えていない。生えていても少し離れた所に生えているような気がします。

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 一つ一つの雑草の特徴を知ることは、嫌われものの雑草と共生できる知恵が生まれるのかも知れない。

 この「他感作用」を使った雑草防除方法(生物的防御)は、かなり成功をおさめている例があるそうです。

  第七章の「除草剤を考える」は、除草剤を使う人には、是非読んで欲しい。

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 一茶は「草の花」(季語)について多くの句を詠んでいます。

この草の花は、雑草と言われる草の花かも知れない。

 門畠や今むしらるゝ草の花

        一茶 『文政句帖』

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 十草文盃 

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