「珠洲焼~中世日本海・黒のやきものグラフィック~」展が、東京・渋谷のヒカリエで開催されているので行ってきました。
12世紀頃からの作品約20点が展示されていました。
私はこんなに多くの古い珠洲焼の作品を観るのは初めてです。
珠洲焼は平安時代末期から室町時代後期にかけて、珠洲郡内で生産された中世を代表するやきものの一つです。
しかし戦国時代(15世紀後半)に姿を消し、幻の古陶と呼ばれていましたが、約500年後の1979年(昭和54年)に復興されました。
珠洲焼は須恵器の技法を受け継いでおり、還元焼成で焼き締め。そして火を止める段階で焚き口を塞ぎ、窯内を酸欠状態にすることによって素地の鉄分が黒灰色の独特の色を生み出します。
主に「壷」「甕」「鉢」を中心に制作され、形は胴の下の部分が細くなっているのが特徴です。
どうして黒灰色になったのかは、当時の貴族好みなど歴史的な要因、または日本海という地理的な要因と様々な意見があるようです。
珠洲焼の装飾の叩き文には特徴があります。
この美しい「綾杉文」ー
土を締めるだけでなく装飾を考えて叩かれ、美しい文様になっています。
「櫛目波状文」
「車輪文」
「印花格子文」
「秋草文」の作品もありましたが、当時の渥美焼(愛知県)の影響かもしれません。
すり鉢の模様に「花文」が付けられていました。すり鉢の役目をしたのでしょうか。 この「花文」は、すり鉢のルーツともいえそうです。
「櫛目文陶片(すり鉢)」
*
すり鉢をかぶった形でわか葉哉
一茶 『文政句帖』
*
この「広口小壺(室町時代)」は、灰の色と流れに特徴があります。
通常は緑色したビードロ色ですが、被った 灰が白いのは、広葉樹の薪を主に使っていたからだそうです。
珠洲焼は、焼き締め陶の中でも、特に特徴があるわけではありませんが、この黒灰の色合いと器面の叩き文の凹凸は、土の温かみが伝わってくるやきものです。
小品などは、野の花を活けてみたくなります。
*
炭化茶碗
口径:15.0cm・高さ:8.9cm
高台径: 5.0cm・重さ:300g
*
*