陶芸メッセ・益子陶芸美術館
開催中の『A la table~益子と笠間のうつわの饗宴~』展を見てきました。
益子と笠間の若者56名と全国で活躍する7名の作品が展示されていました。
優美な曲線、精巧な造形に清楚な色彩で、モダンなスタイルの器物が目立ちました。
産地の伝統に捉われない、新しい陶芸スタイルのうつわを感じさせてくれました。
展示方法にも工夫がされていましたが、日常使う「うつわ」をガラス越しにみるのは、少し違和感がありました。
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益子焼は、江戸時代末期、笠間で修業された大塚啓三郎が築窯したのが始まりです。益子は東京近郊という立地条件がよく、日用陶器から芸術的な作品まで制作されるなど、時代にあった様々な焼き物が作られています。
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「益子」は、私が陶芸を始めた原点の地でもあります。この益子の風土に魅かれて35年前に焼き物を始めました。
現在、主に「笠間」との関わりが多くなりましたが、今回、30年ぶりにやきものについて、いろいろと教えていただいた先生の工房を訪ねました。
工房は益子の中心から少し離れた雑木林の中にあります。75歳になられていますが元気で、今、春の陶器市に向けての準備中でした。
当時の窯がまだ活躍していました。燃料は火力の強いブタンガスを使用しているそうです。
このティーポットとカップは、先生が30年前に作られたものです。
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私が「やきもの」に惹きこまれたのは、粘土を覆っている釉薬に大変興味があり、釉薬の成り立ちや基本となる釉薬が知りたかったからです。
まず粘土の成形より先に教えていただいたのは「三角座標」による釉薬の調合方法です。この方法は詳しい化学知識を必要とせず、少ない原料で簡単に釉薬を作れる方法です。
まず焼き物の基礎となる透明釉を作るために「長石」と「土灰」の2種類を調合したテストピースから始めました。
次に「長石」と「土灰」と「藁灰」の3種類を、三角座標で調合しました。
その中から基礎釉(透明釉)に適するものを選びました。
TP3、7、9の3つ選び、作品によって使い分けをします。
次は「色釉」ですが、「色釉」を作るには、基礎釉(透明釉)に着色金属を加えれば希望の色が作れます。
例えば、益子焼を代表する「柿釉」を作るには、私の作った基礎釉に弁柄を4%加えました。
左下の4が、弁柄4%で還元焼成した柿釉です。
以上は釉薬の基礎の基礎ですが、その後の釉薬つくりや作品制作に役立ちました。
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4月27日からの「春の陶器市」には、益子を訪れたいと思います。
帰る途中、慶応弐年創業の窯元・岩下製陶の「太平窯」を見学しました。
現在は、この登り窯は使用されていません。
庭に並べられた甕は、登り窯で焼成されました。
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頬べたに
あてなどしたり
赤い柿
一茶(『八番日記』)
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湯呑茶碗
鉄分の量を少し変えてみたら、いい模様が出ました。
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