三角座標

 

f:id:kanamankun:20190223230232j:plain

陶芸メッセ・益子陶芸美術館

f:id:kanamankun:20190223224845j:plain

f:id:kanamankun:20190222215143j:plain

 開催中の『A la table~益子と笠間のうつわの饗宴~』展を見てきました。 

 益子と笠間の若者56名と全国で活躍する7名の作品が展示されていました。

優美な曲線、精巧な造形に清楚な色彩で、モダンなスタイルの器物が目立ちました。

 産地の伝統に捉われない、新しい陶芸スタイルのうつわを感じさせてくれました。

 展示方法にも工夫がされていましたが、日常使う「うつわ」をガラス越しにみるのは、少し違和感がありました。

   *

 益子焼は、江戸時代末期、笠間で修業された大塚啓三郎が築窯したのが始まりです。益子は東京近郊という立地条件がよく、日用陶器から芸術的な作品まで制作されるなど、時代にあった様々な焼き物が作られています。

   *

 「益子」は、私が陶芸を始めた原点の地でもあります。この益子の風土に魅かれて35年前に焼き物を始めました。 

 現在、主に「笠間」との関わりが多くなりましたが、今回、30年ぶりにやきものについて、いろいろと教えていただいた先生の工房を訪ねました。

 工房は益子の中心から少し離れた雑木林の中にあります。75歳になられていますが元気で、今、春の陶器市に向けての準備中でした。

f:id:kanamankun:20190223221801j:plain

f:id:kanamankun:20190222230207j:plain

当時の窯がまだ活躍していました。燃料は火力の強いブタンガスを使用しているそうです。

f:id:kanamankun:20190222221854j:plain

このティーポットとカップは、先生が30年前に作られたものです。 

    *

 私が「やきもの」に惹きこまれたのは、粘土を覆っている釉薬に大変興味があり、釉薬の成り立ちや基本となる釉薬が知りたかったからです。

 まず粘土の成形より先に教えていただいたのは「三角座標」による釉薬の調合方法です。この方法は詳しい化学知識を必要とせず、少ない原料で簡単に釉薬を作れる方法です。

 まず焼き物の基礎となる透明釉を作るために「長石」と「土灰」の2種類を調合したテストピースから始めました。

f:id:kanamankun:20190223172034j:plain

 次に「長石」と「土灰」と「藁灰」の3種類を、三角座標で調合しました。

f:id:kanamankun:20190223220652j:plain

f:id:kanamankun:20190224125516j:plain 

その中から基礎釉(透明釉)に適するものを選びました。

f:id:kanamankun:20190223210413j:plain

TP3、7、9の3つ選び、作品によって使い分けをします。

f:id:kanamankun:20190223224412j:plain 

 次は「色釉」ですが、「色釉」を作るには、基礎釉(透明釉)に着色金属を加えれば希望の色が作れます。

 例えば、益子焼を代表する「柿釉」を作るには、私の作った基礎釉に弁柄を4%加えました。

 左下の4が、弁柄4%で還元焼成した柿釉です。

f:id:kanamankun:20190225163400j:plain

 以上は釉薬の基礎の基礎ですが、その後の釉薬つくりや作品制作に役立ちました。

     *

4月27日からの「春の陶器市」には、益子を訪れたいと思います。

 帰る途中、慶応弐年創業の窯元・岩下製陶の「太平窯」を見学しました。

f:id:kanamankun:20190224135206j:plain

 太平窯が2基は、益子町指定文化財です。

f:id:kanamankun:20190222225351j:plain

現在は、この登り窯は使用されていません。

f:id:kanamankun:20190222225418j:plain

庭に並べられた甕は、登り窯で焼成されました。
 f:id:kanamankun:20190224135302j:plain 

     *

     * 

頬べたに

  あてなどしたり

        赤い柿

      一茶(『八番日記』)

     * 

     * 

f:id:kanamankun:20190224135514j:plain

 湯呑茶碗

鉄分の量を少し変えてみたら、いい模様が出ました。

 

     *

     *