三つ星

   どの星の下が我が家ぞ秋の風   一茶   (『文化句帖』)

 この句は、文化3年5月5日、木更津を訪ねた時に詠んだ句です。
きっと澄んだ綺麗な星空だったのでしょう。


 現在、都会では、澄んだ星空は期待できませんが、
 冬の夜空を代表する星座と言えば「オリオン座」です。
和名では「三つ星」と呼ばれています。
 またその形を見立てて「鼓星」と呼ばれたりします。

 「三つ星」は、地方によってたくさんの名前がありますが、
主に「三つ星さん」「三つ神様」と呼ぶ名が多いようです。
 
 古来の人々にとって星は、日常生活と深く関わりをもっていたのです。
 この3つの星の位置と並びを見ながら農業、漁業する人にとっては、
仕事の目安にされていました。
 例えば、麦蒔きは、三つ星が夜明け前に西に没する12月頃を
目安にして行われていたようです。
 
また「三つ星」は「将軍星」と呼ばれ、武家の家紋に好んで用いられました。


  


 このベロ藍の「三つ星紋猪口」は、昨年、骨董市で購入した安いものですが、
陶工たちは、日常使う小さな雑器の中にも、大きな世界を描きたかったのでしょう。