草花(15)

   
                       黒須田川

 暑かった日も、どこかに・・
いつしか芒の穂がなびくようになって来ました。


 「お彼岸」も過ぎ、次第に秋が深まりつつあります。
虫たちも冬籠りの支度を始める頃です(蟄虫坏戸)


  天文学的な季節と異なり、自然季節と呼ばれる気候学的な言葉に
秋霖季」があります。
 この時期は、秋雨前線と台風による雨が多いのが特徴です。
 この「霖」とは「長雨」のことを言うそうです。

 水溜りの波紋は美しいのですが・・・・・長雨は・・!

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 今、湿った草叢や道端に咲いている草花で目を魅くのは、
綺麗な澄んだ青紫色をした小さな花。
 「露草」です。

 花弁を良く見ると、大きな青紫色の花弁の下に、分かり難いですが
半透明の小さな花弁が、もう一つあります。
 6本の雄蕊のうち、長く突き出た2本だけが花粉を出します。

 名前の由来は、諸説ありますが、朝早く咲き昼には萎むという
花の咲き方が朝露を連想させるところから来たと言われています。
 また別名も「蛍草」「藍花」「青花」「移花」「月草」
「鴨頭草」「縹草」「帽子花」など沢山あります。

 日本の伝統色の和名の中に、「鴨頭草(つきくさ)」と
「露草色」という色名があります。
 同じ花の名前を付けた和名ですが「鴨頭草」は濃い青色
「露草色」は薄い青色と色の濃さで別けています。

 『万葉集』に
つき草に衣は摺らむ朝露に濡れてののちはうつろひむとも(巻7−1351)
  という一首があります。

 露草は色がつくことから「つき草」とも呼ばれ、色を染めても、
水に浸すとすぐに消えてしまうところから、「露草」を人の心のうつろい、
儚さの象徴として、万葉集では詠まれています。

 一方、この色素が水に溶けやすい特徴を利用して
「露草」は染物に使われて来ました。
 有名な友禅染では、下絵の行程に、露草の花弁を絞った汁で
染めた紙を使用しています。

 一茶は句会に出た時に、こんな句を詠んでいました。

『文化句帖』
  文化三年九月七日 随斎会 

      朝顔の花色衣きたりけり
           (注)花色衣は、露草などで染めた薄藍色の着物


      長月の空色袷きたりけり   

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      この瓶は、市販の瑠璃釉を使用しました。

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