本箱(7)

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 先日、古本屋で『備前の窯芸』宗田克己著(昭和18年11月発行・七丈書院刊)という本を買いました。

 書名の「窯芸」、通常は「〇〇の陶芸」「〇〇陶磁器」や「〇〇工芸」などと表現されるのが多いのですが、このような書名はあまり見かけません。

 陶磁器は、最終的には窯で焼成されるので、この表現に違和感はありません。

 私は「窯芸」という表現は、人智の及ばない神秘な力が感じられて好きです。

 この本の著者宗田さんは地質学者で、本の「序」に書かれている桂又三郎さんの文章を引用させていただくと

 『宗田さんの備前焼研究は、同氏が地質学専攻の学徒であるだけ、その方法も従来の芸術的、趣味的な鑑賞本位のものでなく、科学者として解剖的な研究をされたものである・・・

 特に「緋襷考」「胡麻」「破片による観方」などは、地質学者らしい焼き物の分析と解説がなされており、新たな視点で備前焼を鑑賞する手助けをしてくれるように思いました。 

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 備前焼の魅力は、薪の灰が降り積もって出来る「胡麻」です。 

 宗田さんによると、窯の構造などによって胡麻の色の違いが生じますが、青緑色のものは「還元性胡麻」、黄色ないし褐色のものは「酸化性胡麻」と言われます。

 艶については、還元性では琉璃光沢、即ちガラスの艶。酸化性では脂肪光沢、即ちバター状です。

 形では、還元性は、苔状をして「玉だれ」になり、酸化性は、散点状と苔状の2通りがあるそうです。

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 2年前の笠間・奥田製陶所の登り窯(胴木間)の内部です。

 黒くなった火側は「かせ胡麻」となり、壁側は、胡麻が完全に融けて、筋になって流れて「玉だれ」となりました。

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高さ:25.6cm・口径:11.5cm

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青苔や膝の上迠春の雨 

        一茶(『七番日記』)

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