句碑散歩(22)

 梅雨の晴れ間を選んで、千葉県銚子市にある一茶の句碑を訪ねました。

 銚子は、文化・文政の頃から江戸の文人たちとの交流があり、俳諧師を招いての句会が盛んだったようです。一茶が、どのような経路で、銚子に行ったかについて『七番日記』に詳しく書かれています。

 文化14年(1817年)5月26日 一茶55才、鹿嶋詣を終えて鹿嶋市大船津より船に乗り、板久(行方郡潮来町)で宿泊し、翌日の27日に船で銚子に入り4日間滞在しています。

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 私は我孫子駅から利根川に沿って走るJR成田線に乗って千葉県最東端のJR銚子駅に向かいました。

 改札口を出るなり高い天井、そして壁の全面が木で作られていました。よく見る駅の内装とは、全く違うのに驚きました。

 待合室には、大漁の幟旗が掲げられて漁師町の雰囲気が一杯でした。

  この駅の外装は、犬吠崎の灯台を、内装は歴史と伝統のある醤油蔵をイメージしてリニューアルされ、2018年3月29日から使われています。

 内装に使っている木材は、千葉県産の「山武杉」が使用されています。

 駅を出て跨線橋を渡り案内板に沿って、5分ほど歩くと・・

 一立山浄国寺の門が見えて来ます。一茶は、6月1日に俳友と共に、ここを訪れています。

 開創は建長7年5月(1255年)で、浄土宗のお寺です。

 境内の芭蕉の句碑は、直ぐに見つかったのですが、一茶の句碑がなかなか見つからず、丁度夏草を刈っている庭師さんに、一茶の句碑の場所を聞くと、墓地の奥まったところにあると教えて頂きました。句碑の周囲は、夏草で覆われいました。「いつもは草を刈ってあるのですが・・」と丁寧に謝られ恐縮しました。

 この場所は、望西台と呼ばれ利根川を望む日観亭という庵がありました。渡辺崋山などの文人墨客が訪れています。碑は苔と地衣類で覆われており、文字がはっきりと読めませんでした。

   此臺乃清風

   堂々ち二心涼しく

   西方仏土もかく

   阿らんと

 

   本ととぎす

   爰をさること

   遠からず

           一茶坊花押

 一茶坊と花押は、はっきりと分かりました。

 この句「本ととぎす爰をさること遠からず」は『七番日記』には載っていません。『化五六句記』の、文化6年4月30日、善光寺という前書きで載っています。

 文字が分かるように、河岸公園の案内板の句碑写真を引用させてもらいました。

 碑は、平成17年に鴎俳句会の発足15周年を記念して建立されました。

 帰りの電車まで時間があったので、銚子大橋付近を散策しました。銚子港は、年間の水揚げ量が全国でも上位を占める漁港ですが、午後の遅い時間だったので港の賑わいはなく、静かな雰囲気でした。

 またこの港は、冬になると、鴎が沢山飛来することでも有名です。この日はハクセキレイの幼鳥かな・・

 一茶は、翌日6月2日に銚子を立ち、田川、布川そして馬橋を経由して江戸に入っています。

 私は利根川から離れるJR総武線に乗り、青々とした下総台地の中に建つ風車を、車窓から眺めながら帰途につきました。

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