七福神詣

 先日、「とね七福神」詣りに行って来ました。

 七つの寺社のうち4つは、2018年2月「句碑散歩(2)」で訪ねています。今回は残りの3つの寺社を加えて七福神を訪ねました。

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 朝10時にJR成田線布佐駅に到着。

 この「布佐」について、芭蕉は『鹿島紀行』の中で、布佐の漁師の家に宿泊しようとしたが独特な魚の匂いのために泊まらなかったと書いています。

 この布佐の対岸が布川になります。布川は、一茶の房総の旅の起点でもあります。そして布川の俳人月船とは、交流が深く度々訪れています。

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 布佐駅から栄橋に向かって歩き、利根川を渡ると布川地区になります。

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 この日は冬晴れで暖かく、栄橋からの筑波山は、すっきりと見えました。

 栄橋を渡った左側のこんもりとしたところが、琴平神社と徳満寺です。

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 この寺社には、一茶の句碑が2基あります。詳しくは【句碑散歩(2)】参照。

 徳満寺の境内には、小さな七福神(石像)が並んでいます。ここだけでもお参りは出来ます。

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毘沙門天(徳満寺)

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 徳満寺の石段の途中に、こんな文字が掲げられてありました。f:id:kanamankun:20220109131107j:plain

「月船と野廻り徳満寺夕饂飩」

 この言葉は、一茶が『七番日記』の中で、文化14年3月26日、徳満寺を訪れ夕食に饂飩を食べたことを記しています。

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 数分歩くと「来見寺」「布川神社」です。

弁財天(来見寺)

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恵比寿(布川神社)

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 その傍に干支の「寅」の瓦がありました。

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 右手に田畑が広がる県道11号を歩いて、一茶と交流が深かった月船の菩提寺である「応順寺」に向かいました。

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 交通量も減り、歩いている人はほとんどいません。長閑な冬の日差しを浴びながら・・いろいろな鳥の鳴き声が聞こえてきます。一茶も月船を訪ねて、この道を歩いたのだろうと想像しながら・・。記録によると月船亭に宿泊したのは40数回あります。 

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 当時、この周辺は広々とした原野であったのでしょう。今でも田畑や野原が残っています。多くの生き物たちが飛んだり鳴いたりしていたのでしょう。

 ほとんど木々は見当たりません。鵙が・・電線が止まり木です。

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 アスファルトの道路を駆けるハクセキレイ・・

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 応順寺の周辺には、まだ田畑が残されています。

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寿老人(応順寺)

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 「月船碑」には、次のような月船の句が刻まれています。

 咲梅のうしろに不二の御顔哉

 寺の周りは開かれており、富士山が見えたのかも!?

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 一茶の句に「鳥の音に咲うともせず梅の花嘉永版』がありますが、境内の梅は、ほころび始めていました。

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 これから訪ねる3つの寺社は、新利根川を越えたところにあります。まず田畑の中に作られた一直線の広い道路を歩いて「f:id:kanamankun:20220109175048j:plain」向かいました。田圃に残った稲穂を食べに、電柱には多く雀が集まって来ています。

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 また鵙に出遭いました。

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 ツグミにも・・

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 新利根川を渡るとf:id:kanamankun:20220109175048j:plain(門の宮)です。 

 このf:id:kanamankun:20220109175048j:plainは読めませんでした。「こうもう」または「みつち」とも読みます。

「蛟」とは、諸説あるようですが、水に関係する龍のことです。

 この神社の始まりは、約2300年(紀元前288年)で「水の神様」が祀られています。水神を祀る神社としては関東最古だそうです。 

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 鳥居の奥に風格のある堅牢な本堂がありました。「前垂れ」の注連縄が一層に荘厳さを感じさせます。この「門の宮」は、文間地区にあり『利根川図誌』では「文間明神社」の名で書かれています。

 この「門の宮」の赤い鳥居は、2016年大ヒットした映画「君の名は」のモデルになったことを知りました。

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大黒天f:id:kanamankun:20220109175048j:plain

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 豊田南用水道路と並行した家並みの細い道を20分ほど歩くと円明寺

 円明寺の創建は、建長7年(1255年)で浄土宗のお寺です。

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布袋尊円明寺

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 早尾天神社までは、新利根川に並行した人家の中の道を歩きました。

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 この天神社には、学問の神として菅原道真が祀ってあります。

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福禄寿(早尾天神社)

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 境内には、早くも紅梅が咲いていました。

 梅花やあけべべきよと鳥の鳴

        一茶『七番日記』

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 早尾天神社から布佐駅までは4kmほどの距離があり1時間ほどかかりました。

 当時、一茶が歩いた時はもっと荒涼とした野原ではなかったでしょうか。今は綺麗に整備され歩きやすい道でした。歩いた距離は約12km。約4時間半ほどかかって布佐駅に帰って来ました。

 毎年、福詣りをしており、今年で18回目になります。今回も天候に恵まれ、ゆっくりと歩きながら、当時の歴史の名残りや佇まいを感じて福詣りをしました。

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