本箱(25)

 三木卓の本は、以前にも『蝶の小径』を紹介しましたが、今回は『昆虫のいる風景』集英社文庫・昭和59年9月刊です。この本は新潮社のPR誌『波』に2年ほど連載されたエッセイをまとめたものです。

 この『昆虫のいる風景』 には、私が散歩で出会う、よく知っている昆虫たちがたくさん登場します。その昆虫たちの一つ一つの特徴や美しさをリアルに表現されています。

 「ガガンボのさびしさ」の中で、路傍の草叢のいるガガンボを見てガガンボは女々しくさびしい。・・・」と。最後にはガガンボが弱いなんていえようか。人間がほろびたって、ガガンボはいるにちがいない」と脆弱なガガンボの生命力の強さを讃えるなど、昆虫愛好家の気持ちが表れています。

 長い足のガガンボについて「裸電球のぼんやりと赤い光を浴びながら、からだをふわふわとゆすぶっていた。俗にいうガガンボの<貧乏ゆすり>だった。」と、ガガンボの足の動きをリアルに描いています。

 この「貧乏ゆすり」は「シバリング」のことではないだろうか。シバリングとは、身震いなどによる体温調整を行う生理現象を言います。ガガンボの場合は、危険を感じた時には痙攣が見られるそうです。そして足をオトリにして逃げるそうです。

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 黒須田川の遊歩道の草叢で見つけた「キリウジガガンボです。体長は18mmほど。

 触ると足が取れてしまいそうなので捕まえることはしませんでした。ガガンボの足は6本あり、体長より長く、その扱いには、苦労しないのだろうかと考えてしまいます。

 日本国内では、110種ほど確認されているそうです。こちらもガガンボの一種。

 名前の漢字表記は「大蚊」ですが、古来の「蚊ケ母」が由来と言われています。

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