本箱(22)

 4月に「カワセミ」についての新しい本が発売されました。

知って楽しい~カワセミの暮らし』笠原里恵著・緑書房・2023年4月10日刊 です。

 著者の笠原里恵さんは、鳥類生態学保全生態学の専門家で、河川や湖沼に生息する鳥類を対象に研究されている人です。

 これまで「カワセミ」については、多くの本が出版されていますが、美しいカワセミの写真集や生態写真がほとんどでした。この本は、カワセミの生態から、カワセミが生息する川の環境、そして生き物に配慮した川づくりまで、これまでのカワセミの本では書かれていないカワセミが暮らす河川の環境や実態を海外の文献を交えて分かりやすく書かれています。また千曲川での調査中に出会ったカワセミの様子などをカワセミこぼればなし」で紹介するなど、カワセミへの暖かい眼差しを感じます。

 小さな川ですが、カワセミを撮影している私にとっては、参考になる内容が多くありました。

 河川環境の問題は、カワセミを含め河川に生息している生き物たちのすべてに関わることで、その環境保護には、人間の活動が大きく影響して来ます。この本は愛鳥家だけではなく、多くの人に読んでもらい身近な川の環境について知るきっかけになればと思います。

     *

 黒須田川は、多摩丘陵の湧水による都会の中を流れ小川です。いつもの穏やかな流れで水鳥が餌を求めて飛来します。

 この風景は散歩していてよく見かけます。サギやカルガモが採食しているところで、じっと川面を見つめるカワセミ

 コサギが足を小刻みに動かすと、川底の小魚が反応して浮かび上がってきます。そこを狙うカワセミ

  しかし豪雨や長雨が続くと増水し流れが激しくなり、川岸の草木が流され川の風景が一転します。

 カワセミは、川の状況を知りつつも餌を求めてやって来ます。

 流れの速い泥水の中の小エビを捕えています。

 黒須田川は、増水によって人家や生活に影響を及ぼすほどにはなりません。しかしこの川で生息していた生き物たちの生息環境が変わります。そして増水によって新たな生息環境が生れます。降雨の翌日になれば、いつもの水量となり緩やかな流れに戻り、新たな環境に鳥たちが飛来して来ます。

      *

 カワセミは、どんな餌を獲って食べているのだろうか。この数年間に撮り溜めたカワセミの食べている姿をまとめてみました。

 この魚は嘴の長さの2倍ほどあります。

 こちらのオイカワは、嘴の長さの3倍もあります。

 こんな離れ技もあります。

 石に叩きつける首の力には驚きです。

 大きな魚は格闘する時間が1分以上もかかっています。

 苦しくないのでしょうか。頭から一気に飲み込みます。

 オイカワ、モツゴ、ウグイ、エビ、ドジョウなどが多いようです。これ以外にも写真に撮ることはことが出来ませんでしたが、直ぐに呑み込んでしまう小さな魚、昆虫なども食べているのでしょう。この写真を見る限りにおいては、黒須田川が増水したり濁っても、カワセミにとっての生息環境が残されているようです。

      *

 一方、信じられない家庭ごみが捨てられていたり、プラスチック系のごみが増えているのも事実です。小魚だと勘違いしてビニールの切れ端を銜えて飛び出して来ることもあります。

 遊歩道には、こんな張り紙がしてありますが・・

 前書の『カワセミの暮らし』の中に「海外ではカワセミのペリットからマイクロプラスチックが発見された」という報告が載せられています。マイクロプラスチックは、5mm以下の小さなプラスチックの破片のことで、私たちの日常生活で使っている身近なプラスチック製品です。きちんと処理しないで川などに捨てると、そこで生息している生き物たちに取り込まれてしまいます。

 こんな景色の中で美しい「カワセミ」を見たくありませんね。

      *
      *