ふらんど

 今年の春は、例年より早いようです。黒須田川の景色も、だんだんと明るい色が増え始めました。モクレン、コブシ、ユキヤナギレンギョウ、ハナモモ、菜の花・・

 その中でも「花」には「鳥」がよく似合います。黒須田川の遊歩道で見かける「鳥」と「花」の景色です

 横浜の桜は3月15日に開花しました。それより1日遅れで、黒須田川の遊歩道のソメイヨシノも開花しました。

 ふらんどや桜の花を持ちながら

        一茶『文政句帖』

 暖かい春の陽ざしの中で、ふらんどで遊ぶ子供の微笑ましい光景が浮かんで来ます。

 『文政句帖』は、文政5年(一茶60歳)から文政8年までの自筆稿本で、一茶の最晩年の句帖です。文政5年3月10日に、三男金三郎が生れますが2歳足らずで亡くなってしまいます。前句は文政7年2月の雪の頃になっていますが、各月ごとに記載されている句は、必ずしもその月に作句されたものとは言えず、三男誕生の頃に、元気に育って欲しいと詠んだ句ではないだろうか。続けて次の2句が載っています。

 狗をふらんどするなり花の陰

 ふらんどにすれ違ひけりむら乙鳥

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 「ふらんど」とは「ブランコ」のことで「ふらここ」「ゆさわり」「鞦韆」「秋千」「半仙戯」とも呼ばれ、春の季語となっています。

 どうして「ブランコ」が、春の季語となったのかは、古代中国で豊穣を祈る行事として女性が寒食の節に「鞦韆」に乗る儀式が行われていました。それが日本へ伝来後も春の風物詩となり、春の季語として定着しました。

 現在使われている「ブランコ」は、古来から伝わる優雅な遊びとしてのブランコではなく、明治政府が体力増強のために西洋から輸入したのが始まりです。

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 私が、ブランコで一番印象に残っているのは、1952年に公開された黒沢明監督の映画『生きる』に登場するブランコです。

 『生きる』は、胃がんで余命の少ない市民課長が、市民の要望である児童公園の整備に全力で注ぐ姿が濃密に描かれています。

 主人公の最後は「ゴンドラの唄」を口ずさみながら雪の降る夜に、完成した公園のブランコに揺られながら息を引き取ります。

 40年ぶりに映画『生きる(DVD)』を観ました。「人間が生きること」とは・・という普遍的なテーマを描いた映画ですが、70年前に制作された映画とは思えない新鮮さを感じました。白黒のもつ陰影のある映像表現と斬新な構成は、我々を魅了させずにはおかない映画です。

 3月末には、ノーベル賞作家のカズオ・イシグロが脚本を手掛けたイギリス映画『生きる・LIVING』が公開されます。

 公園の三種の神器と言えば「ブランコ」「すべり台」「砂場」でしたが、昨今は、ブランコがない公園もあり、高齢者用の健康具に変わって来ています。公園も子供の遊び場から幅広い世代に応える施設に変わりつつあるようです。私も散歩の途中で立ち寄り、健康器具のお世話になる年齢となっています。

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 暖かくなると小鳥たちも性に目覚め、ペアで飛び交う姿を多く見かけるようになりました。あの「ギューイ ギュイギュイ」と騒々しく鳴くオナガ。川を挟んで鳴き合っている声を聴くと、恋の囀りのように聞こえて来ます。

 こんな頭のカワセミ(メス)に出会いました。子育て中のカワセミは、7cmほどの巣穴を何度も出入りするので、羽毛が擦り切れたりボロボロになったりします。

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