黒須田川の木々の葉が落ち、日ごとに冷え込みが増え、冬の気配が漂っています。
先日の雨の日、遊歩道を散歩中に川辺から「キッキッキッ」と雨音をかき消すような激しい鳴き声が聞こえて来ました。
カワセミが2羽・・。夫婦だろうか。
餌を獲る様子でもなく、天敵のカラスか、他の何かに威嚇している様子でもありません。
冷たい大粒の雨は降り続き止みそうもありません。
もう15時過ぎて日暮れて来て薄暗くなってきました。
哀調のある鳴き声にも聴こえます。
きっと子供を探しに来ているのだろうか。どのくらい鳴いていただろうか。私は傘を挿すのを忘れて、その様子をカメラに収めていました。
突然、川面を一匹のカワセミが、カワセミ夫婦の傍を飛んで行きます。きっと子供だったのでしょう。
安心したように、夫婦は今まで鳴いていた声より優しい「チィ」「チィ」と鳴きながら、子供の後を追って川下へ飛び去りました。
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語呂合わせで言うと、今日は「いい夫婦の日」とも言われています。
小林一茶は、52歳で結婚しました。相手は28歳、名は「菊」で、親子ほど離れた夫婦でした。二人の仲は良かったようです。妻の菊のことを「わが菊や形にもふりにもかまはずに」と詠んでいます。
また一茶が愛児を失くして苦しんでいる時に、菊は家周りを支えて頑張ります。その時に詠んだ句に「鬼茨に添ふて咲きけり女郎花」があり、妻への思いを強く感じさせてくれます。しかし菊は3男1女を儲けるが、皆、満2歳を迎えることなく夭折します。そして菊も病気で37歳の若さで亡くなります。
その後、一茶は再婚しますが、9年間連れ添った菊とは、いい夫婦だったのではないだろうか。次の句からも、夫婦の思い出を噛みしめる一茶の姿が浮かんで来ます。
小言いふ相手もあらばけふの月
一茶『文政句帖』
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