黒須田川の水の源流は、多摩丘陵からの湧き出る清水です。この水によって多くの生き物たちが棲息しています。堰は水の流れの緩急をつくり、小魚の棲家ともなっています。
青々とした苔も育っています。
石の苔千代の様を咲にけり
一茶『七番日記』
狭い石の間を流れ、そしてぶつかっては、白波を起こす。
その波音は、散歩者を癒してくれます。
この苔は「ホソウリゴケ」だろう。
苔は一年中見られますが、5月から梅雨の頃が、一番緑色が美しく輝いて見えます。
川面に迫り出すように咲くのは「ブタナ」です。
「ブタナ」は、ヨーロッパ原産の外来種です。フランスでは「ブタが食べるサラダ」と呼ばれることから、日本では「ブタナ」と名づけられました。もう少し可愛らしい名をつけて欲しいですね。
同じブタの名がついた「ブタの饅頭」という花があります。よく知られている「シクラメン」です。
「ブタナ」は「タンポポ」によく似ているので「タンポポモドキ」とも言われます。
ブタナは群生しますが、単独でも場所を選ばず咲きます。特徴のある花ではありませんが、真っすぐに伸びた長い花茎は、私は好きです。
時には、この長い花茎が歩道を遮るように伸びて咲きます。
植物は動けないので、咲く位置によって日光を求めて競り出してきます。
日光の当たらない木陰や大きな木の傍など悪い環境では、生きるために長い花茎を曲げて適応します。この花茎の一つ一つの曲がり方で生育環境の状況がよく分かります。
一度垂れた頭花を持ち上げていく、その力強い生命力には驚きます。
曲がり方は同じ場所でも微妙に違い、それぞれが美しい曲がり方をしています。遺伝子で決められていますが・・個性?があっていいですね。
また複雑に絡み合っている花茎も多く見られます。花を咲かせないまま倒れています。可憐に見える花たち同士が、日々、日光を求めてせめぎあいを繰り返しているのです。
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この日は鳥の囀りよりも、せせらぎの音の方が大きく聞こえていましたが・・
突然、頭上で「キィキィ」と鳴きながら激しく行ったり来たりする鳥がいます。ヒヨドリより小さいようです。尾を振りながら波のように飛ぶセキレイでもなく、電柱の高さのところを弾丸が飛んで行くように見えました。
飛んで行く方向を追っかけ、やっと電線に止まったのを見つけました。傍にはヒヨドリがいました。
「カワセミ」でした。こんなに逃げ回るカワセミを見たのは初めてです。これまでは川面を低く飛んで木の陰に隠れるのをよく見かけました。
止まった姿は親を探しているように見えます。
この時期はカワセミの繁殖期でもあり、カワセミ夫婦を見かけていませんでした。このカワセミは、今年、生れた幼鳥だろうか。
まだ数羽のカラスが川の上空を舞っています。無事に親元に帰れただろうか。
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カワセミには清流。その清流を求めて黒須田川に飛来するカワセミです。
青苔や膝の上まで春の虹
一茶『七番日記』
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