花の競演

  黒須田川の「どうだん橋」の袂に、2つの花が競い合うように咲いています。

 この2つの木は凭れ掛かるようして、ほぼ同じ時期に花を咲かせています。

 木陰で目立たないのか、この花に眼を止めてくれる散歩者は少ないようです。

 花の種類は違っていますが、同じ根元のから生えているように見えます。

 よく見ると木の肌は違います。

 赤紫色の花をつけているのは「花ズオウ」です。

 もう一方の小さな白い花が球状になっているのが「姫コウゾ」です。

 どうして同じところから生えているのだろうか。きっと植えた時に間違えたのだろうか。

 同じ土壌で共生し、それぞれの花の魅力を活かして競演するかのように咲いています。

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「花ズオウ」は、染料となる「蘇芳」という植物とは、別の種類です。花ズオウという名前は、「蘇芳」から作られた蘇芳色に似ていることから付けられました。

 「花ズオウ」は、江戸時代初期に中国から観賞用に渡来。花びらはマメ科の特徴である蝶形花をしています。

 「姫コウゾ」は、樹皮から繊維を取って和紙の原料となります。「楮(コウゾ)」とも呼ばれています。「姫コウゾ」は、雄雌同木なので、同じ枝で花の競演です。

 左が雄花です。右が雌花で独特の形をしていて赤紫色の長い毛は花柱です。6~7月ごろには赤い実となります。

(注)花柱とは、めしべの一部分で、受精する時は花粉管がこの中から伸びる。

 雄花を拡大すると、こんな黄色い小さな花がたくさん付いていました。

 「姫コウゾ」は、もう受精は終えたのかな。だんだんと実が赤く熟し始めています。

 共生する「花ズオウ」の葉っぱがハート形でした。

 やっと暖かさを感じるこの気候。生き物にとって子孫繁栄の大事な時期です。暑い夏が来る前に、草木は実を付けるために頑張り、鳥や虫たちも恋の季節となります。

 この時期を猫の発情行動に例えて、俳句では「猫の恋」という表現をします。

 小林一茶は「猫の恋」について、多くの句を詠んでいます。

 その中から花に因んで

 通路も花の上也やまと猫

      一茶『文政句帖』

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