今年、東京地方では、冬の訪れを告げる「木枯らし1号」の発表はありませんでした。気象庁によると、今年の秋は、高気圧に覆われて冬型の気圧配置にならず、北寄りの風が強まらなかったということです。暖かい日が続くのは、高齢者にとってはありがたいです。
先日は、初冬の雷雨が・・大雨に併せて竜巻情報が出るなど、一気に冬の寒さが到来しました。雨上がりの後、いつもの黒須田川の遊歩道を歩きました。泥水の中でもカワセミは、必死に餌を漁っていました。
この川は大雨が降った後、翌日には澄んだ流れとなります。
「今、カワセミが飛んで行ったね」
「久しぶりに見たな・・」と散歩する老夫婦の会話が聞こえます。
またカメラを川面に向けていると
「今朝もカワセミを見たよ。ラッキー!?」と弾んだ声で話し掛けられます。
フランスの小説家で詩人のジュール・ルナール(1864-1910)は、1896年に『博物誌』を発表しています。その『博物誌』岸田国士訳・新潮文庫の中で、カワセミと出会ったことを・・
「今日の夕方は、魚が一向にかからなかった。が、その代り、私は近来稀な興奮を獲物にして帰って来た」その釣竿に止まったカワセミを「・・大きな青い花が長い茎の先に咲いているようだった・・」(参考までにカワセミの重さは約35g・全長約14.5cm)
「カワセミに樹と間違えられた、それは大いに得意で、息を殺した。」と、その様子が描かれています。
ルナールは日常生活で感じた動物のイメージを簡潔な文体で詩的に描いています。読んでいて動物たちを愛情をもって観察する様子が伝わってきます。
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黒須田川では、時々釣りをする人を見かけます。しかしカワセミは、人を恐れてか釣竿を避けるように逃げて行きます。
今回、紹介するのは2020年2月に撮影した、釣竿に止まったらこんな風景かなと想像して選んでみました。
天敵や人の動きに敏感なカワセミ、こんな無防備なところに長く止まっていることは稀で、穏やかな冬の日ならではの光景です。
【カワセミあれこれ】
以前のブログ(2020/8/24)でギリシャ神話に登場するカワセミに触れましたが、『イソップ寓話』の中にもカワセミが登場します。
カワセミは人間に捕らえられるのを用心して安心な海上の岩に巣を作ります。餌を漁りに出かけている留守に、荒波によって巣が壊され雛を失くしてしまいます。これを知ったカワセミは「陸は油断のならぬものと用心して海に逃れて来たのだが、それはもっともっと信用の置けないものだった」と嘆きます。
そしてその教訓が「こうように人間でも、或る人々は敵を避けながら、知らず識らず敵よりも遙かに惨酷な友人の手に落ちるものです」
私たちの日常の教訓としては理解できなくはありませんが、どうなのでしょうか。
この教訓に、美しく可愛い鳥「カワセミ」を登場させたくないようにも思います。
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