六つの橋+

 コロナ禍の中、6月末に急性心筋梗塞になり一週間ほど入院しました。

 その後の体力の回復のためのリハビリは、屋内ではなく屋外の散歩にしました。

 選んだのは、家に近い黒須田川の遊歩道(すすき野~黒須田)です。ゆっくり歩いて30~40分程度、そして飽きない散歩が出来そうなので決めました。 地点から「さつき橋」までを往復で、ほぼ2.5kmほどになります。

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 橋の名前は

 ①は「ゆきやなぎ

 ②は「おおむら橋

 ③は「どうだん橋」

 ④は「べにきり橋」

 ⑤は「にしき橋」

 ⑥は「さつき橋」です。

 は、短い「暗渠」で、直ぐに細い水路となって源流に至っています。

 この6つの橋は、昭和47年3~4月に竣工されました。橋の名前は、地名ではなく花の名前が付いています。どこにでも見られる親しみのある花です。その花や樹木が遊歩道の随所に植えられています。

 橋のフォルムは、特別の形をしている訳ではありません。通常の生活道路に架かっている橋と変わりません。

 リハビリの散歩道となった黒須田川の遊歩道。そこに架けられた6つの生活橋の四季の風景を織り交ぜて、これまでに撮影した写真でまとめてみました。私の好きな小鳥も随所に登場させました。

    *

 スタートは、家に近い「どうだん橋」から下流に向かって歩きます。

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 この橋から下流を眺めると、春には川底に自生した花桃の花が見えます。

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 初夏には、キリシマツツジの真っ赤な色が眼に沁みます。

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 片側にはキリシマツツジを挟んで、常緑樹のヒイラギモクセイ、サザンカ、ウバメカシ、モモ、トウネズミモチハナズオウ、ツバキ、キンモクセイ、サツキツツジなどが植えられています。

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 川の流れは浅く緩やかで、カワセミにとっては格好な餌場です。

 獲った餌と戦うカワセミ。時にはこんな光景も見られます。

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 反対側には樹木はありません。秋には川べりに沿って芒が並び、夕陽を受けて穂が銀色に輝きます。

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 この歩道を250mほど歩くと、バス路線に突き当たります。奥に見えるのが「べにきり橋」です。

 現在、親柱は補修中。これは補修前の親柱です。

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 バス路線を渡って170mほど歩くと「にしき橋」です。

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 川の両側には、樹木はなく広々とした穏やかな水の流れを感じさせてくれます。

 秋には、両側の草紅葉が美しいです。

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 雨が降ると水量が増え、景色が一転します。

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 雨の日は「キセキレイ」も餌を獲るにも苦労しています。

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 この「にしき橋」を挟んで紅白の桜が競演してしています。

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 道路を渡ると、橋の根元に桜の老木が川底に向かって枝を伸ばしています。

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 この橋の下では、よく「アオサギ」が、じっとして餌を狙っているのを見かけます。

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 この橋から片側に樹木が植えられています。柿の木が2本あり、小さな実を付けていました。170mほど歩くと「さつき橋」です。

 私は、この6つ目の橋を折り返し点にしています。

 これは補修前の親柱で、今は新しいの親柱になっています。

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 この橋から眺めた上流の景色です。

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 時々、イソシギを見かけたりします。

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 下流を眺めると柵の色が違い、しかも柵が高く、川の景色を眺められません。散歩者にとってはつまらないと思います。

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 この「さつき橋」まで約800mほど歩きました。リハビリ当初は、ここで少し休憩してから、上流のa暗渠に向かって歩きます。

     *

 戻った「どうだん橋」の下では、カワセミの捕食の瞬間を撮影できました。こんなチャンスはめったにありません。

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 この「どうだん橋」からの沿道には、ソメイヨシノが植えられています。このサクラの写真を撮りに来る人も多くなりました。

 「嶮山中央橋」をくぐり「おおむら橋」に向かいます。

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 冬は、こんな雪景色となることもあります。

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  この橋から片側200mは、ソメイヨシノの並木です。反対側には、ドウダンツツジヤブツバキキンモクセイなどが植えられています。

 春と秋では違った景色になります。鳥の囀りが多く聞かれるのもこの歩道です。時にはブロックの排水穴から四十雀が顔を出し愛想よく鳴きます。

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 200mほどで「おおむら橋」。この付近には公園や店舗があり、人の往来は多くなります。

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 この橋から眺めた下流の「どうだん橋」の方向です。

 イチョウドウダンツツジ、そしてサクラの紅葉と、様々な色が秋の訪れを教えてくれます。

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 上流を眺めると、夏はガマが密生します。片側にはキンモクセイの間にオオムラツツジが植えられています。

 このガマの葉には、羽黒トンボが群生しています。歩道を歩いていると足に絡まるように優雅に飛んで来ます。

 羽黒トンボは、神奈川県では絶滅危惧種の要注意種となっています。この生息場所を守りたいですね。

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 次の橋「ゆきやなぎ」までは150mほどです。

 これは補修後の親柱です。

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 ここから(暗渠)の方向を眺めると白いユキヤナギの花が川面を覆うように垂れ下がっています。この周辺はスズメの遊び場のようで、多くスズメが集まって来ます。

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 (暗渠)まで歩いて230m。

 メジロは怖がりのようで、すぐに石垣の枝の中に隠れてしまいます。

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 a(暗渠)から眺めた「ゆきやなぎ」です。

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 水面を気持ちよく飛ぶハクセキレイ

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 片側だけに、ユキヤナギの間にサンゴジュ、ヤブツバキキンモクセイトウネズミモチなどが植えられています。夏になると鬱蒼と茂り、掻き分けて歩かなければなりません。

 サンゴジュは、秋になると赤い実が柄まで赤くなるのでサンゴという名が付いたそうです。この木は防火、防風、防音樹でもあります。

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 (暗渠)の前の枯れ枝にカワセミが・・

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 ここからスタートした「どうだん橋」まで戻ります。

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 半年以上、毎日、午前中に歩きました。夏は日陰が少なく暑い思いをしましたが、時々川面からの涼しい風に疲れが和らぎました。この遊歩道、今は「リハビリの道」ではなく「趣味の道」となってしまいました。

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 もう一つの橋・・「嶮山中央橋

どうだん橋」から少し離れたところに架けられています。竣工は1974年、長さ80mの人道橋です。過去には、映画のロケ地として使用さたことがあります。

 橋の全体のフォルムは、人家に囲まれており見えないのは残念です。

 この橋から眺めた景色です。

 青葉の時は・・

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 紅葉すると・・

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 どこにでもある「6つの橋」ですが、その周辺の木々、草花や生物たちが織り成す四季の変化は、都会での生活者の癒しの風景となってくれるように思います。

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 リハビリというと、やや堅苦しくなりますが、散歩と言えば継続できました。

 特に川に飛来する鳥たちの囀りは、歩く楽しみを強くしてくれました。

 ほぼ体調は回復しましたが、小鳥や草花、小さな虫たちにも逢えるので継続していきたいと思います。

 散歩は、健康やダイエットに良いという本が多く出版されています。

 この本は、散歩の愉しみを与えてくれました。

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 『老人とカメラ~散歩の愉しみ』

   赤瀬川原平ちくま文庫・2003年2月刊)

 この本からは、日常の生活や周囲の気が付かないところを見たり、撮ることよって、新しい発見、気づきや喜びがあることを教えられたように思います。

 この黒須田川の遊歩道は、生活道でもあり、最近はウォーキング以外の多くの人々がが利用しています。この川から聞こえてくるせせらぎや小鳥の囀り、木々や草花の色の変化は、都会の喧騒からの一時(いっとき)の癒しとなってくれる川であり、道でもあるように思います。

 道端に現れる鳥たちに出会うと、こんな一茶の句が浮かんできます。

 大勢の子を連歩く雀哉

       一茶『八番日記』

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