先日、神奈川県葉山町にある「山口蓬春記念館」に行って来ました。
訪ねた日は、秋を感じさせるような爽やかな風が吹いており、相模湾の一色海岸も穏やかでした。
平日でしたので海水浴に来ている人は、ほとんどいませんでした。
サーフボードで楽しんでいる若者がちらほら・・・
写真の後方のこんもりした林の傍に「御用邸」があります。
黒い富士山が雲の中から顔を出していました。
右のなだらかな山は「大峰山」です。
その麓に「山口蓬春記念館」があります。
この記念館は、蓬春が亡くなるまでの23年間過ごした旧山口邸です。
ここで山口蓬春「静物画~庭園に咲く花々と古陶磁の魅力~」展が開かれています。
建築家大江匡の設計したユニークな門が記念館の入り口です。
門をくぐり、敷石を進むと萩の花が迎えてくれました。
門なりに咲癖付て萩の花
一茶 『連句稿裏書』
山口蓬春(1893-1971)は、新日本画の技法に取り組んだ日本画家で、また古陶磁器にも関心をもち、若いころから蒐集していました。
展覧会では、蒐集した古陶磁器や庭に咲いた美しい花々の写生(静物画)、下絵などが展示されており、蓬春が めざした新日本画の一端を紹介してありました。
古九谷の皿(記念館の図録より)
この枇杷の絵は、前期の展示で、今回には展示されていませんでした。
嘉靖方壺(記念館の図録より)
この作品は絵画と合わせて下絵と古陶磁が展示されていました。
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図録によると、蓬春が題材にしたのは、主に中国、ペルシャの鑑賞陶器でしたが、磁州窯の瓶は、生涯手元に置いて愛でていたそうです。
蓬春の「静物画」には、古陶磁器に内在している美と自然を愛する温かい眼差しが感じられました。
建築家吉田五十八が設計した画室。
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最近は、古陶磁器を花入れや室内装飾品として、日常生活の中に取り入れられています。
私の好きな陶工・内島北朗(1893-1978)は、随筆『古陶の味』の中で、こう書いています。
「私は自分の生活を豊富にする為めに、自分の身辺に佳き古陶磁を並べる。勿論陶工として仕事の参考にする事は言うまでもない。故に必しも千金の物を望まない。1箇のかけらからも充分なる教えを受け、豊かなる美を見出す事が出来る。」(身辺鑑賞より)
『古陶の味』内島北朗著(富書店・昭和22年9月発行)
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