句碑散歩(12)

 今回は、中山道の「戸田の渡し」を中心に、残されている旧中山道を辿って戸田公園駅まで歩きました。

 JR浮間舟渡駅からスタートして戸田橋に向いました。

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  駅の近く浮間ケ池(浮間公園)の水鳥たちが迎えてくれました。

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 「キンクロハジロ

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水鳥のどちへも行ず暮にけり

          一茶 (『享和句帖』)

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ミコアイサ

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 「オオバシ

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おちつきに

    ちつと寝て見る

         小鴨哉 一茶 

              (『一茶自筆句集』)

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 駅から10分ほど歩くと舟渡氷川神社(十度の宮)に着きます。

 荒川は、名のとうり「荒ぶる川」で、昔、よく氾濫し被害を与えていました。

神社の石祠が洪水で何度も流されても、この地に戻ってきたので「十度の宮」と言われています。

 この神社のすぐ傍が荒川の土手です。

 河川には、ゴルフ場やサッカー、野球場が広がっています。

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 江戸時代、荒川は江戸防衛のために橋が架けられていなかったので、人々は舟によって荒川を渡っていました。

 「戸田の渡し」は、中山道の第一宿場である板橋宿と次の蕨宿との間にある渡しで、交通の要所でした。

 一茶は、寛政3年(1791年)4月10日、郷里の柏原に帰る途中に、この戸田の渡しを渡りました。(『寛政三年 紀行』より)

(注)『寛政三年紀行』は、一茶(29歳)が3月26日、江戸を発って4月18日 郷里柏原に帰るまでの二十余日間の紀行です。 

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(戸田橋の案内板の浮世絵を引用)

 浮世絵に描かれた、当時の荒川を渡る舟の様子です。

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 戸田橋から東へ13mほどの所に渡船場跡の石碑があります。

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 この「戸田の渡し」は、明治8年5月に廃止されています。

 今でも残っているのは、渡船場跡から北に約200mほどの中山道の道筋です。

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 当時の名残がある「水神社」「地蔵堂」を経て、国道17号を歩きました。

 一里塚跡と思われる場所付近(川岸三丁目)のガードレールには、渡船のレリーフが取りつけてありました。

(注)一里塚とは、江戸時代、旅行者の目印として一里ごとに設置した塚で、樹木が植えられました。

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 絵は浮世絵の絵と同じものです。

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 国道17号から旧中山道の道筋が残る下前公団通りを歩き、戸田公園駅に向かいました。

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 戸田公園駅の東口緑地の中に、一茶の紀行文の石碑がありました。

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 当時の中山道の様子が書かれています。

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  一茶は15歳で故郷を離れ江戸に奉公し、14年ぶりの帰郷でありました。

『寛政三年紀行』に

「・・父母のすくやかなる顔を見ることのうれしく、めでたく、ありがたく・・・」

 久し振りに故郷へ帰る一茶の気持ちが書かれ、父母に逢える喜びが伝わってきます。

 紀行文の最後は

門の木も

    先ずつゝがなし

          夕涼

 という句で終わっています。

 この句は、柏原の実家跡の句碑となっています。

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  短い距離ですが、歩いてみて交通量の多いことに驚きました。

 当時も人々の往来は多かったのでしょう。

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 戸田公園駅東口の緑地公園には、戸田南小学校の生徒の作品が展示されていました。

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 舟に乗っている人物は、一茶ではないだろうか。
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