私がよく行く地区センターの図書館では、夏休みの企画として
『読んでみよう こんな本』と題して、小学1年から中学生を対象に
10冊ほどの本が紹介されていました。
その中に、私の本箱の中にある本が紹介されていました。
『モギ ちいさな焼きもの師』です。
『モギ ちいさな焼きもの師』リンダ・スー・パーク著・片岡しのぶ訳・あすなろ書房・2003年10月刊
この本は「第50回(2004年度)青少年読書感想文全国コンクールの課題図書」となっています
私は、もう一度読み直して見ました。
12世紀後半の韓国西海岸の小さな村の話です。
橋の下で、おじいさんと貧しい暮らしをする少年モギ。
その運命を変えたのは、美しい高麗青磁の輝きでした。
優しいおじいさんを支えながら、やきもの師(象嵌青磁)の見習いとなって
成長していく姿が逞しく描かれています。
この本と併せて、芝木好子さんの『青磁砧』も読み直しました。
青磁陶器の美しさに魅かれていく娘とその父の物語です。
陶芸作家(青磁)の名品への父の執着。
青磁作家への娘の想い、父娘の愛憎と葛藤が描かれています。
芝木さんの描く工芸作家の世界は、制作過程を詳細に取材されており、
その焼き物への熱い愛情を感じさせてくれます。
また焼き物を創る者には参考になる事柄も多く書かれていました。
特に作品が生まれていく「貫入」についての話は、大変興味がありました。
「米色青磁」について、詳しく書かれていますが、
10年ほど前に岡部峯男さんの『青磁を極める展』で見た、
「窯変米色瓷砧」「窯変米色瓷盌」など、
二重貫入の深みのある釉色の重量感が浮かんできました。
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本と言えば、気になるのが「紙魚・染み」です。
「紙魚」は、シミ科の昆虫の総称で、虫によって喰われて生じるものです。
黄色い「染み」は、主に湿気によるもので、
湿度の高い日本では避けられないようです。
川島つゆ著『一茶の種々相』(春秋社・昭和3年7月刊)によると
一茶は、たくさんの書物を読んでいたことが書かれています。
エアコンのない江戸時代、除湿には苦労したのでしょう。
当時の本には、虫食いの「紙魚」と湿気による「染み」が
たくさんあったかもしれない。
逃げるなり紙魚の中にも親よ子よ 一茶 (『七番日記』)
(注)紙魚は夏の季語です
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焼き物の世界でも「虫食い」という表現があります。
それは釉薬と胎土との収縮率の違いで起きる「釉のハゲ」のことを言います。
この2冊の本を読んだ頃に、制作した青磁風の作品です。
瓶の表面の小さな黒点は、地元笠間の鉄分の多い土を使用したので
黒い点として現れました。
私の窯は、やや還元気味に焼成されるので酸化焼成しても
青磁風の色合いになります。
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