句碑散歩(5)

 神奈川県には、一茶の句碑は少なく、
紹介されている句碑の一つ、茅ヶ崎市の「松籟庵」を訪ねました。
(『一茶と句碑』平成15年4月刊・里文出版)

 JR茅ヶ崎駅南口を出て、高砂通りを約5分ほど歩くと
静かな住宅街に、大きな松が立ち並ぶ「高砂緑地」が見えてきます。

   

 この高砂緑地内の日本庭園の一角に建てられた茶室・書院が「松籟庵」です。

 庭園は梅の名所でもあり、そして随所に、いろいろな石灯篭が配置されています。
奥まった竹林と小さな滝の傍に、一茶の句碑がありました。

   

 
  
   竹にいざ梅にいざとや親雀   一茶    (『句稿消息』)

(注)『七番日記』には「竹に来よ梅に来よとや親雀」となっています



 この周辺は、明治時代から昭和初期にかけて避暑の好適地として
別荘が建てられました。今もその一部が残されています。

 都会で雀が見られなくなりつつありますが、この緑地では、
松林の中を雀が飛び交い、囀りがよく聞こえて来ました。

 

 そして「ムクドリ(椋鳥)」だけは餌を探しながら、
人なっこい動きで近づいて来ました。

 椋鳥は、都市部などでもよく見る鳥で、嘴と足が黄色をしているのが特徴です。
 名前の由来は、諸説あるようですが、椋の木の実を好んで食べるから椋鳥と
呼ばれるようになったとも言われています。

 椋鳥は、丸々として可愛らしい鳥ですが、当時の江戸の人には、
あまりスマートでなく、野暮ったく見えたのでしょう。
 田舎からの出稼ぎ者を「椋鳥」と呼んで蔑み、陰口をたたいたようです。
一茶も大層気分を害したようで『八番日記』に

   『 椋鳥と人に呼ばるる寒さかな 


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